ウンスはシャインの眠る傍らで、手首に手を当て、脈を見ている。

『良かった、落ち着いてきた。』

そっと上掛けのなかに戻し、薬の準備をしようと、診察室へと向かう。

そこで、ファルコンとヨンが話をしているのを、耳に挟む。

「テサンは親代わりなみたいなもんだしな。」

『えっ⁉何?』

ウンスはそのまま足が止まる。

『どういう事?親代わり?だって、アッパの古くからの友人って、言ってたのに。』

ウンスはそのまま、動けなくなり顔の色がだんだんと変わっていく。
そんな様子を庭先からテサンが見ている。

『ファルコンの野郎、わざとか。気付いてるだろうが。』

テサンがウンスの元へと行こうとしたその時、ウンスは動きだし、またシャインの元へと戻っていく。


『あ~あ、ヤバイか。』



シャインは目が覚めていた。
何かを感じたのか、扉の方を見ると同時に青い顔をしたウンスが入ってくる。

「ウンス?」
「シャイン。」
「何かあったのね。」
「今まですごく不思議だったの。三人が家に来る度に、懐かしかった。それは小さい頃から、会っていたからだと思ってたのに、違ったのね。」
「そう、聞いたのね。」
「ファルコンがヨンに話してるのを聞いたの、立ち聞きなんてしたくなかったのに。ファルコンは私が聞いてたことをわかってたのよね。」
「そう。」

シャインは起き上がり、両手を広げ、

「いらっしゃい。」

ウンスはシャインの胸の中へと飛び込み、シャインの腕がウンスの背中に回る。

「確かに記憶を書き換えたのは私よ。
でもねウンス、それは貴女に足かせを掃かせたくはなかったから。
小さい頃あなたの夢はお医者さん。
私たちが怪我をしたときに治せるでしょって。
でも、戦闘の記憶があれば医者には慣れない。
そうでしょ、命を奪っていた者が命を助けるなんて、そんな虫の良い話はないわよね。
だからこそ、記憶を書き換えたの。
ねぇウンス、あなたはもとに戻したい?記憶を。」

ウンスはゆっくりと顔を上げ、シャインの瞳を見つめる。

「考えたい。」
「ファルコンには、後でキツく言っておくわ。私が話約束だったにと。昔から仕方がない人よね。」

ウンスはゆっくりと体をお越し、シャインの隣へと座ると、

「抱き締めていてくれる?」

シャインはそっとウンスを抱き締め、小さかったウンスを思い出していた。



扉の外から、ファルコンとテサンは様子を伺っていた。

「やっちまったな、今回ばかりはお前の先読みは外れたぞ。シャインに断らずに話すからだ。後で怒られるな。」
「そうかな。」
ファルコンはニヤッと笑うと、廊下の向こうから来る人影に向かって歩き出す。

「今は無理だ、ウンスとシャインが話をしている。」

ヨンは目の前に立つ男の顔を見ると、脇を通り抜けようとした。
その先には、じっとヨンの顔を見るテサンと目が合う。

『お前が入れる隙間はない。』

そんなテサンの考えが読み取れることに、ヨンは不思議な感覚に陥っていた。


「三人とも中に入って。」

シャインが部屋の中から声をかけると、
テサンは部屋の中へと音も立てずに入る。
ファルコンも部屋へと振り返り、やはり音も立てずに入った。
そんな二人の様子を見て緊張した面持ちで部屋へと入り、後ろ手に扉を閉めた。