3月も半ばに差しかかりようやく春が顔を出しつつある季節
綺麗な青空の下梅の桃色が香り始める
待ち遠しかった季節の到来にどことなく心も踊り
海辺をギターを抱えてただただ無心に歩いてみた
いつもの場所は生憎の工事中につき立ち入り禁止
それでも構わずいつもの場所へ向かう
座るとそこはいつもの潮騒と変わらぬ風が吹いていた
と言いたくてここまでやって来たのだが現実はなかなかそうはいかない
大気は黄色く見えるものは全てが霞を帯び咳き込む人がちらほら見えた
西からやって来た砂風に目をかばいながら
いきなり耳にするようになったPM2.5の不可解な数字に
心なしか恐怖を覚え沈みゆく太陽の前でただギターをかき鳴らした
周囲を歩く幾名の人々には高校を卒業したばかりであろう若者もいた
これから故郷を離れ進学や就職といったそれぞれの道へ行進んで行くのだろう
これまでとは違い大きく変化する生活感と拘束から解放され手に入れた大きな自由
各々がそれなりに感じてそれからの自分というカタチを作っていく時間
同じような経験をして今日に至るわけだが
願うべきはどんなに困難な事象に遭遇しようとも
夢と現実の間で必死に耐え続けながら
倒れそうになりながらもどうにか地に足をつけ続けてほしい
どんなに理不尽な逆境に陥ったとしても
決して心は折れることなくわずかながらでも明るい未来を見つめてほしい
例えそれが真っ暗な未来だとしても
儚かろうとしっかりと生き続けてほしい
とかつての自分自身に言い聞かせるように
汚い砂塵の景色の中たいして強くもない喉を潰しながらも
その殺風景をかき消さんとばかりに
程よく枯れつつあるアコースティックギターの音色と共に必死で中身のない歌をうたった
一日何も口にしていなかったせいかお腹の虫は極限の空腹さを覚え
なんとも変わった三角形のあんぱんを頬張りながらその場を後にしたわけだが
そこに置き忘れた白いピックを少し離れで聞いていた女子高生が拾い上げ
何を感じたのかはわからないが隣にいた誰かと笑い合っていた