モロッコ西部にあるこの美しい都市の中央広場は、夜ごと活気ある巨大な野外レストランに変わる。
マラケシュの旧市街のジャマ・エル・フナ広場に夕闇が迫ると、折りたたみ式のテーブルやコンロ、つぼ、鍋などを携えた男性や少年が集まってくる。それから数分のうちにテーブルと椅子が並べられ、つぼは液体で満たされ、コンロには火が入る。やがて、ケバブや魚のフライ、パンの匂いがあたりに漂い始める。
夜の屋台村の幕開けだ。これほど強烈で華々しい食の体験ができる場所は、モロッコにはほかにない。太鼓やベルの奏者、蛇使い、物語の語り部、火食い、奇術師などを見ながら、この町きっての安くて新鮮な食べ物を味わうとしよう。
まずは広場を一周したい。それ自体が楽しいし、どこで何を食べたらよいか事前に見当を付けることもできる。モロッコ料理になじみがないなら、タジン、クスクス、ケバブなどを少しずつ食べさせてくれる屋台がおすすめ。食べたいものが決まっているなら、じっくり焼いた子羊、ハリラ(ひよこ豆のスープ)、メルゲーズ(羊肉のソーセージ)、ケバブなど、それぞれを専門に出す屋台に向かおう。冒険したい気分なら、トリップ(牛や羊の胃)の煮込みや、ゆでた子羊の頭を食べてもいい。
モロッコ料理がどれだけ洗練を極めようと、このバラ色の都市で最も多様で美味なる食の体験ができるのは、やはり夜の屋台村なのだ。
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■ベストシーズン 屋台は毎晩6時以降に始まる。モロッコでは9~5月が比較的涼しい。
■旅のヒント 広場とその北側の市場はたっぷり時間をかけて見て回ろう。日中もオレンジジュースの屋台や水売り、蛇使いが出てにぎやかだ。カフェもたくさんある。カフェに座って、世の動きにしばし思いをはせるのもいい。「カフェ・ド・フランス」には広場を一望する屋上のテラスがある。有名なレストランをチェックしながら町全体を見て回るには3~4日必要。「リアド・タムスナ」は昼食におすすめだ。夕食だったら「ル・フンドク」で、おいしいフランス風モロッコ料理が食べられる。「ダール・モハ」と「ダール・ヤクート」は、マラケシュの美食レストランの双璧。
【見どころと楽しみ】
<タジン>
タジンは時間をかけて煮込んだ香り高いシチューの名前。もともとはベルベル人の伝統料理だったが、今ではモロッコ料理の代表格となった。通常は肉または魚を野菜と一緒に煮込むが、野菜だけで作ることもある。
この料理に使う円すい型のふたがついた陶製の鍋も「タジン」という。伝統的なモロッコの家庭では、この鍋を炭火のコンロの上に置き、均等に熱が加わるよう、だんだんと炭を足していく。蒸し煮の状態でゆっくりと火を通していくので、ソース自体は煮詰まっていくが、肉の軟らかさとたくさんの肉汁は保たれたままだ。
ほとんどのタジンは鶏肉か子羊肉が主役。油と香辛料の使い方はさまざまだ。バターとアーモンドを使うレシピもあれば、タマネギを入れるものもあり、ショウガとサフランで味付けするものもある。レモンのジャムは多くのレシピで使われる。
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