海沿いでも険しい奥地でも、シチリア島のケーキ屋ではマジパンが主役。いろいろな果物に似せてつくるお菓子は、祝日や祭日には欠かせない。
ケーキ屋のショーウインドーにはいちじくや梨、かご一杯のいちごや桃が並んでいる。どう見ても本物としか思えない。が、実はそうではない。そこにあるのはすべて、甘いアーモンドペースト、マジパンで作ったお菓子だ。
2世紀に及んだアラブ支配は、シチリア島にいろいろな食文化をもたらした。アーモンドペーストもアラブ人が伝えたとされている。
シチリアでは、祝日や祭日を特別なマジパンで祝う習わしだ。復活祭にはマジパンの羊(アニェッロ・パスクワーレ)を作り、誕生日や特別な日には、フルッタ・マルトラーナ(本物そっくりな果物)を作る。
アチカステッロのノルマンの城。カターニアの北の海に浮かぶ(c)SIME/Alessandro Saffo/4Corners Images
11月初旬の諸聖人の祝日には、子供の靴の中に祖先がマジパンで作った果物を入れるという言い伝えがある。有名なフルッタ・マルトラーナは、パレルモの修道女マルトラーナが考え出したものだ。昔、大司教を迎えるために、収穫後の裸の木々に、レモンやオレンジなどマジパンで作った果物をつるして飾ったのがはじまりといわれている。
パレルモでは、「アルバ」や「カフリッシュ」で、精巧なフルッタ・マルトラーナが買える。タオルミナの「パスティッチェリア・エトナ」も良い店だが、熱心な人ははるばるノートまで足をのばす。シラキューズの南の丘に開かれたこの蜂蜜色のバロックの町には、カルロとコラードのアッセンツァ兄弟がマジパンを作る「カフェ・シチリア」がある。
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■ベストシーズン 寒くて雨が多い冬は避けよう。南シチリアの春は天気が変わりやすいので、傘とサングラスの両方が必要。3月上旬、ノートの険しい斜面はアーモンドの花で覆われる。
■旅のヒント ゆったりしたシチリアのペースに合わせて1週間は島に滞在したい。シチリアの主な町は列車やバスが通じているが、田舎に行くにはレンタカーが便利。カターニアからエトナ山まで登る列車は、途中アドラーノとブロンテに止まる。駅のプラットホームの時計が正確ではなくても驚かないこと。
【見どころと楽しみ】
<味な町めぐり>
■友人や家族と夜の散歩に出てカターニアのエトナ通りをぶらつこう。カフェに入って、カステルモンテのフリツァンテ(スパークリングワイン)を1杯とアランチーネ(野菜入りのライスコロッケ)で締めくくれば最高。
■エトナ山西麓のアドラーノの北にある町ブロンテは、総面積1万エーカーのピスタチオの段々畑の中にあり、「チッタ・デル・ピスタッキオ」(ピスタチオの町)と呼ばれている。ピスタチオの実は2年ごとに収穫され、9月に収穫祭が行われる。シチリア最高のピスタチオのジェラートやビスコッティ(固焼きビスケット)、ケーキはここで食べられる。盆にずっしりと盛られたドルチェ(お菓子)や、高く積み上げられたトローネ(イタリア風ヌガー)のほか、ピスタチオで作ったペーストもある。
■シチリアの西岸、パレルモ近くの海を望む山の上にある中世の町、エリチェのスイーツの店がおすすめ。またエリチェの小径の迷路の一角にある「リストランテ・モンテ・サン・ジュリアーノ」では、昼食に魚介類やオバルジン・インボルティーニ(魚を茄子の薄切りで巻いたもの)が食べられる。
■エリチェの南、海辺の町マルサラでは、ここで造られるワインを味見しよう。多くの小規模生産者がシチリアのジビッボ種を使って上質な甘口と辛口のワインを造っている(マルサラのラベルにQのシールがあれば品質保証済み)。5年以上熟成させる甘口のマルサラ・ヴェルジーネは濃厚なデザートによく合う。
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