ワタシが大好きだったおじいさん。


だいぶ前に亡くなったとお聞きしました。
本当に忘れられないおじいさん。

ある企業の会長さんという立場をお持ちで、
とってもお金持ちと聞いていました。

口を開けば、
これはワシの金や、と言ってました。

だからといってワタシ達に
それをひけらかすような
真似は決してなさらない。

ワタシはお客様のことを
お父ちゃん、お母ちゃんと
呼ばせていただくことも多く、
この方のことも
お父ちゃんと呼んでいました。

それを嫌な顔するわけでなく、
おぅ、今日は夜勤かと
気さくに笑顔で
話してくださる方でした。
とっても可愛らしく、
とっても優しい。

いつだっていちスタッフとして
大事にしてくださったと
感謝いたしております。

最初の印象は
見るからに 偏屈ジジイ。

口はいつだってへの字口。

でも慣れていくと
どんどん笑顔が出てきました。

ある日、こんなことがありました。

その日はワタシにとって
大変なことが起こった日です。

今でも覚えています。
大変なことはまた別の話ですが。

いつも通りに
食後の服薬にまわりました。
その時にこれまたいつも通りに
みかんをくださったのです。

3つ。

今日の夜勤中に食べたらえぇ

いっやぁ〜、お父ちゃん
いつもかんにん
せやけど気ぃ使われたら
困ってしまうわぁ
他の人にあげて〜

しかしお父ちゃんは

他の人にもやってるさかい
持っていき

え〜?!
いつもすんません
おおきに〜

ということで
そのみかんをいただいたのです。

ただ、ワタクシ。
人からもらったものは
あまり食べないのです。

いつも誰かに

貰い物ですけど、どうぞ〜

と渡して食べていただきます。

その日は時間が遅く、
お渡しさせていただく人が
おりませんでしたので
手元に3つみかんが残っていました。

次の訪室にて
お父ちゃんから聞かれました。

おぅ、みかん食べたか?

もちろん食べてないですが
こう答えました。

うんっ!
めちゃくちゃ美味しかった!!
お父ちゃんから貰うんは
何でこんなに美味しいにゃろなぁ?!

するとお父ちゃん、
ものすごく怪訝な顔。

その顔に、
ん? なんか間違った??
反応が違う?!

焦ったワタシは
ほなお父ちゃん、また来るわ〜、と

そそくさと部屋を後にしました。

フロアのカウンターに戻ってきて
思いました。

……………、まさか……………

そう思って1つみかんを向き
一粒食べました………が

ものすごく水臭かったのです。

っっっ!!!
しもたっ!!! やってもたっ!!!

もう後の祭りです。

次からは夜勤明けに
わざわざ部屋へ呼び出され、
これを飲んでいけ、
これを食べていけと
目の前で食べることを
余儀なくされました。

あれは本当に大失態でした。

別のある日、
夢を見たそうです。

お父ちゃんが夢の中で
仲間とゴルフに行っていたそうです。

そして賭けゴルフを
したらしいのですが
ことごとく負けたそうです。

夢の中でこう言ったそうです。

金はやるからもう勘弁してくれ

お父ちゃんらしい夢やなと
思いました。

この話を笑いながら話されていました。

その話を聞きながら
やっぱりお父ちゃんは面白いと
思いました。

今からすると本当に楽しい
思い出です。

こういう人たちが
今の日本を作ってこられたのです。

身近でそんな方々に
触れ合う時間がいただけること、
大変な幸せだと思っています。

感謝いたしております。