何故このような事になったのか


男は考えて居た

か細く震える白い手を引きながら
まだ雪の浅い道を走りながら考えて居た

何故

足元に見える雪の様に
白く、美しく、頼りない手

時折すすり泣く声が聞こえる

何故

男は走る、ただ走る

いつからかこれほどまで
自分は慈愛に満ちた人間であったかと

何故

つかんだ手の主は
かつて愛した人である

何故

この身体、命までも、
貴方様に捧げますと云う

消え入りそうな声がしている

何故

そんな事よりも
今はただ逃げなくては


何故

何故

頭の奥からこだまする

そうだ、俺は、
俺は関係ないのだ、と

男の目がきらりと光る

今ここで首に手をかければ
可哀想な男だと身を差し出せば

振り返ると
同じ眼をした女が居た





薄れゆく意識の片隅で
すすり泣く声がしている

何故

女は倒れ込む

複数の足音

何故

何故


『この人です』
弱々しい声が降る

疑問は核心へと変わる

げに恐ろしきは
人間、そして、浪漫

女の美しい唇は弧を描いて居たのだ。