評価
★★★★★



このイノセント・デイズという本、一言で表すなら「暗い」。


まず私は帯の言葉に心を惹かれた。
「少女はなぜ、死刑囚になったのか」
どういったストーリーなのか、全く想像もつかなかったが、この本を読み終わったとき私はかつてないほどに衝撃を受けた。


主人公の死刑囚「田中幸乃」

物語は幸乃が死刑宣告されるところから始まる。
元恋人の家に放火し、妻と1歳の双子を殺めた罪で裁かれるのだ。彼女は罪を認め、死刑を受け入れる。だが反省の言葉は絶対に口にしない。そこに隠された真実は何なのか、物語は衝撃の結末をもたらした。

物語は幸乃の幼少期にまで遡り、幸乃がどんな人物だったのか紐解いていくのだが、読み進めれば読み進めるほど幸乃が凶悪犯罪に手を染めるような人物には思えなかった。

純粋無垢で心優しい女の子。
それが幸乃に対する印象。彼女の壮絶な人生の中で、彼女が凶悪犯になり得る要素がないのだ。

そんな彼女を救おうとする幼馴染みたちもまた、物語の中で重要となる人物である。弁護士である翔と、幸乃が唯一心を許す慎ちゃん、二人は違った形で幸乃を救おうと奔走するのだが物語は中々好転しない。

私もこの本を読んでいく中で幸乃が救われることを願った。

段々と真実が見え始め、幸乃を救える場面は要所要所出てくるのに彼女はそれを望まず自ら死を望もうとする。彼女の壮絶な人生を思えばその気持ちも分かる気はするが、一読者として、私は彼女が救われることを望んでいた。

物語のクライマックスには真犯人が登場し幸乃が無実だということが証明されるが、結局私の願いも虚しく、刑は執行されてしまう。こんな結末を誰が想像しただろう。最後には救われると思っていた分、私はものすごい衝撃を受けた。

他人に迷惑を掛けることを極度に嫌い、自分を消し続けた彼女が最期の最期に自分の意志を見せ、死ぬために見せた生きることへの執着や凄絶な発作に耐えた姿は、胸が締め付けられるほど悲しかったが、それほどまでの死に向かう意志の強さは美しくも思えた。死ぬことが彼女にとっての最大の「幸せ」ならば、この結末は最高の結末なのかもしれない。



私の中にはただただ悲しいという思いがあるが、この小説に込められた思いはそんな単純なものではないことは分かっている。感じ方は人それぞれだし、色んな意見があっていいと思う。
ただ私は、他の人がどんな思いをもったのかも聞いてみたい。