高温多湿の気候風土に合わせた木材の腐りにくい構造について考えてみます。木材は建築資材の中では実は大変長持ちする素材です。コンクリートの耐用年数は最も長い評価基準で考えると固定資産税の耐用年数の算定方法(1951年旧大蔵省主税局)では120年から150年とされているが、木材の場合奈良の法隆寺で考えるとコンクリートの十倍の1400年経っています。木材は千葉大学名誉教授の小原二郎氏の研究などによると経年変化で乾燥が進み強度は上がるという。氏の著書「木の文化をさぐる(NHKブックス)」では、法隆寺古材は新材より強いとして「なぜなら木は伐り倒されてから200~300年までの間は、圧縮強さや剛性がじわじわとまして、二、三割も上昇し、その時期を過ぎて後、緩やかに下降しはじめるが、その下がりカーブのところに法隆寺材が位置していて、新材よりもなお一割くらい強いからである。バイオリンは古くなると音が冴えるというが、これはこの材質の変化で説明できる」と書かれている。

 長持ちする家を作りたいなら、まずは骨組みに木を使うことになる。

木材の特性について。木材の欠点は湿気を帯びると腐朽(ふきゅう 木材が腐ること)やシロアリなどの虫害を受けて劣化することと、火に弱いこと。火災が起こった場合には仕方がないが、火災以外で考えると木材を湿気させない限り長持ちする。

 湿気を帯びると木材表面に付着した木材腐朽菌が繁殖し、栄養源として木材を分解していく。木材腐朽菌には様々な種類があるが、わかりやすく言えばキノコである。また、日本に生息するヤマトシロアリやイエシロアリは湿気た木材を食害する。腐朽や虫害が発生し、進行していくと骨組みみそのものの強度が低下する。よほどのことでない限りすぐに建物が倒壊することはないであろうが、地震が発生した際などには危険である。

 また日本の気候風土は東南アジアに近く夏場は特に高温多湿で蒸し暑い。木材は吸放性を持った素材なので湿気を吸ったり吐いたりしている。これがよく言われる木材は伐られてからも生きていると言われる所以である。雨漏りや夏場の多湿などが原因で木材に含まれる湿気(含水率)が高くなると腐朽や虫害の危険信号が灯る。しかし、木材が空気の対流に触れている場合には木材自身の吸放性によって含水率を下がることができる。しかし、空気の対流の悪いところではどんどんと含水率が高まりやがて腐朽が始まってしまう。