インスペクションとは該当する領域の専門家であるインスペクターが商品やサービスを体験して、品質実態を評価することを指します。一般ユーザーが評価する事はユーザーテストと呼ばれますが、インスペクションの最大の特徴は専門家の目で評価することであり、インスペクションの品質は専門家の「見る眼」で決まってきます。

現在日本の住宅の総数は持ち家だけで約960万戸あり、内昭和25年以前の古民家などは140万戸、昭和25年から35年の間に建築されたものは81万戸あまり残っています。(平成20年総務省調査)

古民家とは築50年以上経った古い住宅の事を言います。木造住宅の平均耐用年数は日本建築学会の統計によると現在は約40年程度ですが、古民家の場合100年200年経過したものがまだまだ多く残されており現在も人が生活されているものもめずらしくありません。これらの古民家なども合わせた中古住宅は既存住宅ストックとして全国に5760万戸残っているとされそれをどう有効活用するか議論されていますが、既存住宅ストックの活用には下記のような問題の解決の必要があると考えます。

1、中古住宅の品質の明確化
建築後の改修などの履歴(家歴書)などの作成や、今後のメンテナンススケジュールの提供、そして適正な価格での販売。

2、木造住宅が長持ちするという事への消費者の理解と促進
固定資産税の評価基準では木造住宅の耐用年数は25年程度ですが、木造住宅の構造材に使われる木の性質(乾燥が進む事で強度が増す)や日本の気候風土に合わせた間取りや工夫の数々を古民家から学び現在の住宅に活かす必要があると思います。

3、古いものに価値を見いだす価値観の創造
車、家電、携帯電話、日本は戦後先人の努力で経済立国となり、次々と新しいものも生み出して来ました。その中で住宅も工業製品化が進み、新しいものほど良いと言う価値観が浸透してしまった気がします。日本では古い住宅の事を中古住宅と言いますが、英語にはそれに当たる適切な英語が無いという話を聞いた事があります。それは海外では中古住宅に住む事が当たり前だからでもあります。イギリスなどは自分の代で家を建て替えなければならない場合はアンラッキーだと言われるそうです。

中古では無くて、ヴィンテージ、あるいはアンティークに価値をシフトする価値観の転換が迫られています。


4、中古住宅購入による新たな人生設計でのお値打ち感
人生を掛けて払い続ける住宅ローン、もし中古住宅を購入してリフォームすれば住宅ローンの返済額は減らせるはずです。そうすれば余ったお金を使い、旅行に行ったり、趣味に講じたり、もっと人生を豊かにする為のお金の使い方ができると思います。

これら言わば消費者の意識改革を図って行く事が住宅ストックの有効活用の為には必要であり、その中で古民家という住宅カテゴリーがその構造の長期耐用性、現在とは違う新たなライフスタイルの創造などでフラッグシップとして牽引する重要性があると考えています。

平成10年から平成20年の間に解体された住宅は、昭和35年以前の建物は年間約5万棟、昭和55年以前の建物は29万棟、いずれもすごい勢いで壊されています。使えなくなって解体するのは仕方が無いですが、解体される建物の多くは「使えない」のではなく「使わない」から解体されている気がします。

使えるものを解体して捨ててしまう、地球が泣いている気がします。