今日は住育考えた家のご紹介

この家の動線は動線が終わる事の無いサークル状の回遊動線として計画しています。

家の中心に階段を配置し、時計回りで台所、洗面浴室、トイレ、玄関、そしてリビングとリビングから2階へあがる階段、ダイニングにアプローチできます。台所で調理したものはすぐに反時計回りでダイニングへ、家族は玄関から帰ってくれば1/4移動して3時の方向にある洗面所で手を洗い、汚れ物を洗濯機に放り込んで、逆に1/2移動して9時の方向にあるリビングにたどり着きます。更に11時の方向にいけばダイニングで、家事をする人と動線が交差する事はありません、

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常に誰もが回遊しながら様々な行為を行う事が出来るのです。ちなみにこの家の場合は玄関とリビングの間や、台所から玄関までの間にも扉は一切ありません。扉は機能が変わる空間に出入りする場合(例えば廊下とトイレや、廊下と寝室など)には必要不可欠ですが、家事の動線上にある場合はひとつの手間が増えるのです。玄関とリビングに扉を設けない事は賛否両論というか反対意見が多かったのですが、玄関の廊下部分とリビングに1段段差を設ける事で明示的な境界線を作って対処しました。

1段上がったり下がったりする事で空間が変わった事を認識してもらったのです。キッチンとダイニングも1段段差があります。高さは15cmぐらいです。高齢者向けのバリアフリー住宅ではとにかく段差があっては行けないとの認識で段差を極力無くしたり、低くしたりしますが、高齢者が最もつまずきやすい段差は3cm程度の小さな段差と言われています。高齢者の方はバランスを取ろうと歩行の際にはすり足になってしまうので小さな段差ほど危険なのです。タンスに足の小指をぶつけると似たようなもので小さな段差ほど危なく、逆に15cmぐらい段差を取る方が安全なのです。

私が住宅を設計する際には玄関は通常なら15cmの段差を設けます。玄関の上がり框に座る事を想定するなら35cmぐらいにします。室内は出来るだけバリアフリーにしますが、5mmぐらいの段差が出来る場合には逆に段差を大きくする事を考えます。バリアフリーとは単に段差をなくす事ではなくあくまで障害を取り除くという意味です。

取り除く事が出来ない問題がもし起こったら、なぜその障害が問題なのかを考え、別の観点から段差を逆に高くするなどのアプローチもひとつの方法では無いでしょうか。


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外観は南欧プロバンス風です。塗り壁に本物の煉瓦を積み上げています。工業製品では出ない本物の素材が持つ存在感は経年変化で味が出てきます。

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玄関廊下からリビングを見る。床に1段段差を設ける事で建具が無かっても部屋としての分離は可能です。寒さを気にされる方もいらっしゃいますが、玄関ドアに断熱ドアを使用しているので気になりません。


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リビングは屋根の勾配に合わせた吹き抜けの空間で、構造材として使用されている古材が表しで見えています。壁は海外の住宅と同じように塗装で仕上げています。

今日はこれからお客様との打ち合わせです。


住育についてはこちらにも書いています。

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