僕たちはそのまま同じ中学校に進学した。

僕のモテっぷりは相変わらずで、ファンクラブもあった。中学には違う小学校からも生徒が来ていたけど、僕目当てにこの中学に来たと言う子もいるくらいだった。
でも正直、僕は告白されてもどうして良いかわからず、「ありがとう」とだけ答えていた。
(これがまたモテ要因になっていたようだ)

僕は小学校の時から仲の良かった奴らとつるんでいて、そいつらが中学の悪い先輩と仲が良かったから必然的に僕もその先輩達と仲良くなり、タバコも始め、バイクにも乗っていた。

そんな僕だったが、ユカは毎日僕のいる教室のドアから顔を出して僕に手を振るのが日課だった。
面倒くさかったけど、僕は毎日手を振りかえしていた。

ある日、とある女子から
「あんた、5組のユカのことが好きなんだって?私もあんたのことが好きだから、私ユカのこといじめるから」と言われた。

「ユカをいじめるなよ。いじめたらお前なんて絶対に好きにならない」と言ってやった。

別の日、クラスの奴から、また別の女子がユカが僕と仲が良いからムカつく、いじめてやると話していたと聞いた。僕はすぐさまその女子の所に行き、ユカをいじめるなと言った。

また別の日、他の学校の女がやってきて「ユカって女、どれ?」と聞かれた。
そんな女知らない、と答えた。

僕と仲良くしていると、ユカがいじめられる。
そう思った。
朝、ユカが教室に来て手を振るのを避けるために、ユカの来る時間は席を外し、万が一ユカが来ても無視をした。
色んな女から告白され、適当に返事をしていたら付き合っていると噂された。
2週間ごとに僕と付き合う順番が決まっていて、僕は言われるがままにその子達と2週間ごとの入れ替わりで一緒に帰った。

とある女子から「ユカちゃん、◯◯と付き合ってるんだって」と聞かされた。どうやらユカも僕のことなんて忘れて彼氏ができたようだ。
僕から告白すれば誰とでも付き合えた。それが面白くて何も考えずに、ユカの目の前でユカの友達に告白したこともあった。
僕にも本気で好きになった「彼女」もいたりしたけど、僕が振られたことは一度もない。

そうして中学卒業を迎えた。
暴走族にも入っている僕は、ちょうど卒業式の日に補導され、卒業式に参加できなかった。
高校も受けた高校に全部落ちて、親父に殴られた。
中学を卒業したら、働かなければいけない。

もう今から、ユカと仲良くしてもユカはいじめられないだろうか。
ユカはどこの高校を受けたんだろう。
新聞の市内の高校の合格者発表から、ユカの名前を探したけど、どこの高校にもユカの名前を見つけることができなかった。
ユカも全部落ちたのか?いや、僕と違って真面目なユカに限ってそんなことはない。
市外の高校に行くのだろうか。

ユカのことなんて、僕の口からは誰にも聞けないまま、僕は親父と同じ大工になり、ユカのことなんかすっかり忘れて大人になった。