本を読んでて、800字で書いてみようみたいなのがあったから、書いたやつ、出来たから読んで欲しい
1000文字超えちゃった
アキラ
その日も電車は人で満杯だった。
駅と駅との間を川の水が流れるように進んでいる。やがて終点の池袋駅に着くと、人がドアから零れるように流れ出ていく。この電車は車庫には入らず、折り返しで始発の駅まで戻るらしく、また人がなだれ込んでくる。僕は、電車を降りてそのさまを見ていた。用があって池袋まで来たのだが、なんだか足が進まなかったのは、その電車がおもったよりなだらかに進んだことに理由があった。
満員電車に揺られることで、いつもなら憂鬱な気持ちになるのだが、今日は違った。なぜだか、いつもと同じように進むこの電車が、走らせる軌条が、窓から見えたあの景色が、僕を穏やかで柔らかい気持ちにさせたのだ。
僕は改札を出た。東口で待ち合わせをしているのだが、僕は東口側とは反対の、丸ノ内線へ続く道を歩んだ。どうしてもこの柔らかく、温かい心模様を、無くしたくはなかった。寒い冬の日に、湯たんぽを抱きしめるように、私のために弾かれるピアノの音色に耳を傾けるように、僕はどうしてもその一瞬を大切に保存したい気持ちになったのだ。丸ノ内線を目指す人々が歩くその道の途中に花屋がある。僕はその花屋で花束を作り、それを購入した。オレンジ色のガーベラが目に入り、そのガーベラに合うような緑の葉が着いているものを選んだ。なんとなくだった。
時計の長針が7を過ぎていた。予定の時刻はもう過ぎている。僕は焦った。だが、僕は手に花束を持っていた。崩さないように暖かく抱きしめ、急いで東口に向かった。彼女は僕の事を待っていた。肩に着くほどの長さの髪が、そよ風でなびいていた。池袋はいつも、せかせかとした空気が流れているのに、まるで君の周りの空気は、スローの動画を流しているように、ゆっくりと流れていた。
「ごめん」僕はアキラにそう言った。彼女は今日初めて僕の顔を見た。僕の一言で僕に気づいたのだろう。「待ったよ。」そう言って柔らかく笑った。「君にどうしても渡したくなって、花を買っていたんだ。」君は驚いたようだった。見開いたその目に光が差し込んでいた。「どうして、私に?本当に?いいの?」「そりゃあ、君を思い浮かべて買ったんだ。この花は、君が持っているのがいちばん似合うんだよ。」僕はそう言った。ちょっと照れくさいことを言ってしまったと言った後に思った。後悔はしない主義で17年生きてきたつもりだが、アキラは僕の人生の主軸を揺らがせている。「私うれしい。ありがとう」そう言って僕の手を取り、2人は歩き出した。なんだか秋のようにあたたかく、優しい冬だった。