2012年3月、大学生活を終えた私は、当時の愛車Giant Escape Rx3で京都から愛媛(宇和島)の実家へ自転車の旅をした。2020年になった今、写真を整理していると、当時の懐かしい写真とメモを見つけた。このまましまっておくのは惜しいと、おもむろにPomeraを取り出し、当時のことを思い出しながら旅行記を書いてみた。

1日目(2012年3月20日)
 先日中に重たい荷物は郵便で送っておき、旅に必要な物をリュックに詰め、堀川通りのアパートを出発。準備に手間取り、出発が3時頃になってしまい、急いで自転車に乗った。途中、北野天満宮前の茶屋で実家への土産を購入し、北野白梅町前の自転車屋でメンテナンスをしてもらい、西大路通を南下。


 西大路五条から桂川の方向へ右折。ここから、川に沿って大阪へと向かう。空を見ると太陽は、西に傾き始めている。



 河原の道は走りやすい。踏切で急行列車の風をうけつつ、「これに乗ったら楽に行けるだろう」という輪行の誘惑を蹴り、再び向かい風に向かって走る。


 久我橋にさしかかる。日がだいぶ陰ってきた。この辺から、河が合流したり高速がかかっていたりと少し迷いながら、枚方市内へと入る。

 天野川から見える夕日が美しく、しばし撮影タイム。日が暮れてしまった。あと2時間で大阪南港につかなければ、フェリーに間に合わない。

 ここからは必死に自転車を漕いだ。幸いサイクリングロードが整備されており、走りやすい。十三大橋前で落車。フロントフォークに傷がついてしまった。
 伝法中公園から大通りに入り、コーナン弁天町で必要な物を購入。船出港の1時間前になんとかたどり着くことができた。自転車をフェリーに預け、乗船。フェリーの大浴場でゆっくり身体を揉みほぐし、展望席から明石海峡大橋を眺めながらビールを飲み、客室へ戻って就寝。




2日目(2012年3月21日)
 朝6時、愛媛県東予港に到着。7時まで船内休憩できるが、今日は100K以上走らなければならない。朝食を済ませ、6時半に出発。昨日の疲れが筋肉痛で全身に出ている。頑張ろう。


 東予港を出発し、国道11号線を目指す。朝日が菜の花を照らして美しい。とりあえず松山まで45キロ。


 桜三里の上り坂が続く。狭い道をトラックや車が行き交う。なかなか前に進まない。


 桜三里の下りは爽快だった。麓のコンビニで一息つき、国道23号を走る。


 伊予市。車で走りなれた国道56号に入った。目印のバナナ館。ここで、チェーンの油が乾いていることに気づくが、近くに自転車屋やホームセンターがない。前に進むしかない。


 国道56号を通るか、双海に出るか迷い、山より海が気持ちいいだろうと双海へ出る。ここにも峠が。。。しかし、峠を超えると美しい海が見えた。こっちの道を選んで正解だ!


 海辺を走っていくと、有名な下灘駅に到着。ここは、男はつらいよ第19作「寅次郎と殿様」で撮影スポットとなっていた。私は男はつらいよが大好きで、全作何度も見ている。ここに寄らない訳にはいかない。まるでセットのような美しい駅、駅のドアからはホームと海とが一望でき、千と千尋の海の上を走る汽車を思い起こさせる。ここは、もちろん単線で、列車は各駅停車の1両編成。都会では、電気で走る電車が主流だが。四国はディーゼル車。海辺を走るワンマン列車。鉄道マニアにはたまらないだろう。今日は晴天、夕方には美しい夕日が海に沈むだろう。しかし、まだまだ道のりは長い。写真を撮ったらすぐに出発。




 少し走ると、美しい菜の花群が線路下に咲いているのを見かけた。もちろんここでも写真撮影。上を汽車が通れば、最高なのだが。時間が無い、先を急ごう。


 3月、朝晩は肌寒い。ウインドブレイカーを着こんで出発したため、暑い。上着は脱げても、ズボンは脱げない。ただただ暑い。もちろん、貧乏学生の僕はサイクルジャージなんて便利な服は持ちあわせていない。ガンガン照りの海岸を走る。


 やっと肱川へ行く続く国道24号線の看板が見えた。ここから、大洲に抜けられる。


 予想に反して長い。やっと大洲市内にたどり着いた。ゆっくりご飯を食べて行きたいが、今座ってしまったら、もう立ちたくなくなるだろう。コンビニで補給を済ませ、西予市を目指す。


 右手に大洲城が見える。ここもまた、男はつらいよの撮影地であるが、止まる気力がない。西予市に抜けるには、また長い峠がある。


 峠を一つ超えたが、ここから15キロの峠。タイヤの空気がだいぶ減っている。が、空気入れという気の利いた物は持ちあわせていない。西予市の自転車屋で入れよう。



 夕日を浴びながら峠を登る。もう脚の感覚がなくなってきた。最後の坂を登っている途中、ついに限界がきた。自転車を横に倒し、仰向けで10分ほど眠ってしまった。自転車をおしつつ、なんとか峠を越え、西予市の看板が見えた。ここから先は、下り坂はあっても上り坂はない。淡々と自転車を漕ぐ。



法華津峠を下り、吉田町図書館が見えた。私の住む町、吉田町の顔的存在の建物である。今まで味わったことのない、「家に帰ったぞ!」という気持ちが溢れ、感動で言葉がでなかった。ちなみにこの図書館、二条城をモデルにしているらしい。



実家に着いたのは、夕方5時半。朝6時半に東予港を出発し11時間。ろくに装備もしていないクロスバイクでよくここまで走った。家に変えると風呂に入り、飯を食べ、翌日の夜12時まで眠り続けた。そして、起きたとき、自転車の前後タイヤがパンクしているのに気がついた。僕のESCAPE RX3、よくぞ家までパンクせずに走ってくれた。