よこくりのブログ

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Yo co-creation(よこくり)として、ビジネスに関する情報を書いていきたいと思います。

 

 

前回は、スタートアップ企業の社長との会話をきっかけに、人材採用にはマーケティングと同様な考え方が必要だとお伝えしました。また、アプローチ方法とそのステップを紹介しました。

 

今回は、人材採用の現状とともに、皆様の企業でも活用できそうなトレンディな人材採用方法について書きたいと思います。

 

 

 

まずは、人材採用の現状について、改めてになりますが見ていきたいと思います。

皆様ご想像のとおり、就職活動の用語でいうならば、今は売り手市場です。

以下のグラフを見てください。水色の棒グラフが月間有効求職者数、青色の棒グラフが月間有効求人数、折れ線グラフが有効求人倍率を表しています。有効求人倍率は、令和5年(2023年)以降は常に1.2倍を超えています。有効求人倍率とは、求職者数に対して求人数が何倍あるのかを示しています。式にすると 有効求人数÷有効求職者 です。

つまり、理論的には常に2割もの企業は、人材が不足していることになります。加えて、必ずしも求職者が希望している仕事の求人があるわけではないので、マッチングができずに、数字より多くの企業が人材不足になっていると言えるのではないでしょうか。

 

図表1:求人、求職及び求人倍率の推移 (2024年5月)

 

出典:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和6年4月分)について

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40423.html

 

実際に採用活動はどうなっているのかというと、2025年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.75倍と、2024年3月より0.04ポイント上昇しています。図表2のように、従業員規模別で比較すると、より詳細な傾向が見えてきます。従業員300人未満、300人〜999人、1000人〜4999人、5000人以上と分類すると、300人未満の中小企業は、なんと2025年3月卒の大卒者の求人倍率が6.5倍もあります。2025年以前の実績からも、常に人材獲得に苦戦している状態が続いていることが明らかです。

 

図表2:従業員規模別 求人倍率の推移

出典:リクルートワークス研究所

https://www.works-i.com/surveys/item/240425_recruitment_saiyo_ratio.pdf

 

大卒採用が難しいのではれば、中途採用で人材確保をしようと考えますが、実態は図表3のとおり、2023年度上半期の状況では、従業員規模に関わらず人材獲得が難しいようです。

 

図表3:従業員規模別 2023年度上半期 中途採用における必要な人数の確保状況

出典:リクルートワークス研究所

中途採用実態調査(2023年度上半期実績、2024年度見通し正規社員)

https://www.works-i.com/surveys/item/240118_midcareer.pdf

 

この必要な人材を確保できないという傾向は、図表4を見ると、2013年度以来緩やかに悪化してきていることがわかります。

 

図表4:中途採用における必要な人数の確保状況


出典:リクルートワークス研究所

中途採用実態調査(2023年度上半期実績、2024年度見通し正規社員)

https://www.works-i.com/surveys/item/240118_midcareer.pdf

 

このような状況のなか、各企業は人材獲得に採用活動を強化するわけですが、採用活動は、軽視できないほどのコストがかかります。1件あたりの平均採用コストについてですが、読者の方々も記憶にある就職活動時によく使っていたインターネットの求人情報サイトの利用は平均28.5万円、民間職業紹介事業者(紹介会社)では平均 85.1万円、人情報誌・チラシでは、11.3 万円かかっています(正社員の採用活動コスト)。

 

図表5:1件あたりの平均採用コスト(正社員)

出典:令和3年度厚生労働省委託調査 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 令和4年3月 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000956216.pdf

 

トータルで、1人あたりの平均採用コストは、新卒採用 93.6万円、中途採用 103.3万円という調査結果が出ております!

 

図表6:採用コストの相場

出典:株式会社リクルート「就職白書2020」

 

ここまでの情報を考慮すると、人材確保は、喫緊の課題であることは明白です。かつ、効率的な人材採用の実施と採用後の離職により採用コストを無駄にしない・・・ということが企業の切実な課題であると言えます!!ではどうすれば良いのか・・・

 

そこで、エージェントを使うとかハローワークやH Pで募集するという従来の方法ではなく、近年効果を出してきており、また広まりを見せてきている採用方法をご紹介したいと思います。それは、リファラル採用とアルムナイ採用です。

 

リファーラル採用とは、自社の社員・知り合いから、つながりのある人材を紹介してもらい採用する方法です。ちなみに、企業の役職のある人からの紹介採用である「縁故採用」とは異なり、必ずしも重役による紹介である必要はありません。社員のつながりによる人材紹介のことを示します。

アルムナイ採用は、転職や起業といった仕事上の理由により退職した「卒業生」の中から、人材を再度雇用する方法です。

 

リファーラル採用は、米国などでは広く使われている採用手法でしたが、日本でも広まってきています。例えば、東急エージェンシーは、年間10〜15人を社員紹介で採用しており、求人広告や人材紹介を活用するより圧倒的にコストを下げられているとのことです(日本経済新聞)。この手法は、人手不足の影響を受けやすい中小企業も取り入れているところが多くなってきていて、リクルートキャリアが始めた社員紹介支援サービスの利用は、製造業や飲食、介護施設、美容院などが多いといそうです。

実際、中小企業支援で私が関わっている居酒屋の話ですが、その居酒屋はリファーラル採用を活かして、良いアルバイトを採れています。その居酒屋が位置する地域は、飲食店でなかなか良いアルバイトを確保できないという悩みが多かったのですが、その居酒屋は既に働いているアルバイトAさんがアルバイト候補を自分のコミュニティから見つけて紹介してくれました。紹介されたアルバイトBさんは、とても良い働きをしてくれて、そのBさんが紹介してくれたアルバイトCさんも同様だったそうです。

 

また、公的機関を介して支援している情報通信企業Z者の社長は、人手不足と言われているこの情報通信業界にも関わらず、社員の紹介で人がすぐ採用できるうえに、離職率も低いと言っていました。

 

このように、スムーズな採用につながる理由は、既に従業員の立場で、その企業のことをよく理解している人が紹介するので、入社前から採用候補者は社風や働き方をイメージできるからでしょう。また、既に活躍している従業員が所属するコミュニティには、その従業員と類似した「人種」である可能性が高く、よって企業ともマッチしやすいと言えるでしょう。このように考えると、リファーラル採用は、大変納得のいく理に適った人材採用手法だと考えられます。

 

一方デメリットという点では、「人材のタイプが偏る可能性がある」や「不採用の場合には人間関係に亀裂が入る」という声もあります。

これらのデメリットに対しては、確かに配慮が必要なので、リファーラル採用を行う場合は、企業や事業主の戦略を考慮して、リファーラル相手を偏らないようにするとか、本格的な採用プロセスに入る前に、まずは企業と候補者のカジュアルな接点を持ち相互理解を深めるところから始めるなど工夫する必要が出てきます。

 

アルムナイ採用は、私が以前勤めていた外資系ソフトウェアベンダーでも採用している方法です。退職する際に、アルムナイカードをもらいました。元々、その企業は「出戻りOK」の企業だったので、一度辞めた人が、また戻ってきたということは多々ありました。「お帰りなさい〜(笑)」と会話を交わしたことを覚えています。外資系は、進んでいるな〜と呑気なことを考えていましたが、最近は大企業では当然のように、このアルムナイ採用を行なっています。

日本経済新聞の記事でも、日立製作所の取り組みが紹介されていました。10年前に起業をしたいと辞めた社員が、古巣に戻ってきて、活躍をされているということです。一度、起業をして様々な経験を積んだ後に、次にやりたいことが古巣ではできるのではないかと考えて決断されたそうです。

 

マイナビが2024年2月に企業の中途採用担当者856人から回答を得た「中途採用・転職活動の定点調査」によると、アルムナイ採用を実施している企業は4割に上っています。

規模の大きい会社ほど、実施率が高く従業員が301人以上の企業は55.7%であり、「今後検討する」と回答したところを含めると約7割ほどになると書いてありました。

 

図表7: アルムナイ採用の実施状況

出典:日本経済新聞

 

企業のメリットとしては、54%が「即戦力として活躍してくれたこと」と回答しており、「採用・育成コストを削減できたこと」(48.0%)、「自社外で身につけたスキルを還元してくれたこと」(44.6%)、課題としては、「既存社員との処遇差に対する不満の発生」(35.9%)や「既存社員との人間関係トラブル」(34.9%)を挙げる担当者が多かったようです。

 

ここまでご紹介したリファーラル採用とアルムナイ採用、いかがでしょうか。聞いたことがある方法だったのではないかと思いますが、改めて多くの企業で実は活用されているということと、効果が出ていることを知っていただけたのであれば、嬉しいです。

 

ただ、この両方の方法に共通して前提条件と言える、とってもとってもとっても大事なことは、「その企業や事業主自体になんらかの魅力があること」なのです!

 

魅力がないと、友人に自分が勤めている企業への転職を勧めません。魅力がなければ、一度やめた企業に戻ろうとは思いません。

 

採用活動はすごく課題に感じているけれども、企業の方向性や理念、人事制度、企業内の雰囲気には、気づけばあまり目を向けられていないという企業もあります。確かに競争率の激しい人材採用市場ですが、だからこそ、もし採用活動を課題として持たれている企業があれば、もう一度自社の強みや魅力について考えてみることを強く推奨したいと思います。

逆に、魅力を打ち出し、自社のブランディングを確立してしまえば、人材採用もこれまでよりスムーズになり、またミスマッチが少なく、採用した人材がすぐ辞めてしまうという不幸もなくなるでしょう。

 

以上、今回は、人材採用の現状とトレンドについてのブログをお送りしました〜〜〜