前々回に引き続き、「ドーピング」の問題について考察したい。
3. スポーツ界以外にも広がる「ドーピング」
スポーツ選手が薬物などを利用して記録を向上させようとする「ドーピング」。ありのままの肉体を鍛え上げて戦うことが大前提のスポーツに嘘、欺瞞を持ち込む卑劣な手法だ。しかし、果たしてこれはスポーツに限った問題だろうか?
勿論そんなことはなく、欺瞞によって成績を一見向上させる事案は他の社会にもはびこっている。
経済界はどうだろう?
ライブドア事件の堀江貴文氏は粉飾決済、つまり業績が良いように嘘を並べた罪で逮捕された。本当であれば前年比で経常利益が-120%のところを+300%と書き変えた。
オリンパスやカネボウも粉飾決済していたことが明らかになっている。
こうした企業だけではない。ギリシャ政府は財政赤字をひた隠しにし、現在のユーロ危機を招いている。粉飾決済もギリシャの財政赤字隠しも、通常であれば、すぐにバレるものではないという。会社であれば破産の危機になり、どうしようもなくなって監査がされる。国も通常は他国が監査することはなく、破綻寸前になって明るみに出たのだ。
こうした「バレなければ嘘をついて良い」という欺瞞体質は社会全体にはびこっている。それを考えると、スポーツの世界でだけ、常に厳しい検査に追い回され、違反すればほぼ全ての栄光を奪い去られてしまうのは、少し可哀想な気もする。
4. iPS森口尚史氏の問題で浮かび上がる学術社会での「ドーピング」
私は不正によって成績を上げることから「ドーピング」と呼ぶのが適切と思うが、森口氏の問題に絡めて改ざん捏造の問題を研究ロンダリングとして記事が掲載されていた。
学術研究の世界でもこうした「ドーピング」の問題は深刻だ。
森口氏の問題から分かるように、業績をアピールした者勝ちで、実際に実験をしていなくとも、それらしく捏造したデータがあれば、東大や東京医科歯科大学などの教授達を騙すことなど簡単なのだ。実際にこれまで様々な大学において何人もの教授、准教授達がこうした不正問題で処分されている。
東京大学では、今年の3月に非常に有名なK教授が論文不正で引責辞任に追い込まれている。教授が非常に有名であったこと、不正の規模が大きかったことなどから、生物学界を大きく揺るがす事件であったのだが、1年も経たないうちに森口氏の事件である。これでは東大のコンプライアンスが全く機能していないのをアピールしているような者である。ただし、これは東大に限った問題ではない。例えば、この東大のK教授の事件で、東大側では論文不正を認めているのにも関わらず、関係していた人物(現在は群馬大学教授)は特に何の処分も下されていない。
こうした科学不正にも、企業同様、通常はバレないという素地がある。つまり、実験に対して不正がバレる前に監査が入ることはないのだ。しかも、他の研究からある程度推測できることを捏造した場合には、たまたまついた嘘が真実である可能性があり、確認の実験をした際に捏造したデータに近いものが得られる可能性もあることが難しいという問題もある。
5. 「ドーピング」すれすれの「学術ロンダリング」
偽造するのは何も実験データだけではないことも明らかとなって来た。
近年、「学歴ロンダリング」という言葉が流行っているらしい。最終学歴を綺麗にする行為のことだが、iPS問題の森口氏が使っていた手口が分かり易いのでこれを例にとる。
1. 県立西の京高校(偏差値低い高校、しかし京大医、慶應医など受験し不合格)
2. 2浪で駿河台大学法学部(弁護士になると豪語)
3. 1989年(高校卒業後6年で)、東京医科歯科大学医学部看護学科
4. ハーバード大学客員研究員 (2ヶ月ほど)
5. 1999年、東京大学先端科学技術センター研究員(医療統計や知的資産管理)
6. 2002年、東京大学先端科学技術センター客員助教授
7. 2007年、東京大学より学位(博士号)授与
など
ここで注目したいのは東京医科歯科大学「医学部」の「看護学科」。医者になるのは医学部医学科で、こちらは難易度が格段に難しい。そこで医学部看護学科に入学して、「医学部卒」を名乗る。これは間違ってはいないが、普通の人は医者だと勘違いする。
ハーバード大学に関しても世界最難関の大学だということで、そこで研究できるなんてすごいと思ってしまうが、「訪問研究員」という身分は非常に低く、知り合いのコネがあれば、ほぼ誰でもなれると考えて差し支えない。
また、大学院を最終学歴に挙げている人は要注意である。通常、大学院の入試はどの大学でもきちんとしたテストはなく、ほぼ所属研究室の教授の一存で合格が決まっている。また、大学院で医学部を選ぶと最終的に「医学博士」という肩書きになるのだが、これは医者であるように勘違いするが、医者ではない。つまり、「東大卒の医者」的な学歴を手に入れたければ、どんな大学と卒業していようが関係なく、東大の医学部の先生と仲良くなって、大学院に入れてもらい、医学博士をとると良いのだ。芸能界でもこのようなことをやっている人がいるようなので、注意してみると面白いかも知れない。
6. 社会問題として考える
では、なぜこうした「ドーピング」やってしまうのか?
これはスポーツの世界も他の社会でも同様の力が働いていると考えられる。
アームストロングのドーピングを証言した元同僚達は、皆、ドーピングせざるを得なかった状況も告白している。ドーピングなしには他の選手と渡り合えず、プロになりたいのであれば、ドーピングするより他なかったというのだ。
他の社会も同じだ。成果が出なければそれ以降の援助が断ち切られる。そうしたプレッシャーにおかれ、成果が出ずに今終わりを迎えるよりは、一時しのぎだとしても今嘘をついてチャンスを得て、見つかるまで生き延びようとするのだ。しかも、すでに言って来たが、スポーツを除く、多くの分野では何がしかの違反や破綻が生じない限り、調べられる可能性が極めて低いという現状もこうした不正を後押ししている。
こうした過度の競争社会、成果主義におけるプレッシャーによって不正は後を絶つことがない。正直者がバカを見る社会構造になっていることは否めないのだ。スポーツの世界ではアンチドーピングが組織立てて行われている。他の社会においても現在のように野放しにするのではなく、定期的な監査によってドーピング摘発が適切に行われて、正直であることが正しい社会であり続けて欲しい。
<サクッとまとめ>
1. スポーツ以外でも「ドーピング」問題はあり、むしろそちらが深刻だ。
2. 森口氏によって科学者業界の闇が少し明らかにされた。
3. 多くの社会では定期的な「ドーピング」検査はなく、学歴すら、詐称スレスレの「ロンダリング」が可能である。
4. 社会全体として「アンチ・ドーピング」がなされ、正直者が得をする社会になって欲しい。
3. スポーツ界以外にも広がる「ドーピング」
スポーツ選手が薬物などを利用して記録を向上させようとする「ドーピング」。ありのままの肉体を鍛え上げて戦うことが大前提のスポーツに嘘、欺瞞を持ち込む卑劣な手法だ。しかし、果たしてこれはスポーツに限った問題だろうか?
勿論そんなことはなく、欺瞞によって成績を一見向上させる事案は他の社会にもはびこっている。
経済界はどうだろう?
ライブドア事件の堀江貴文氏は粉飾決済、つまり業績が良いように嘘を並べた罪で逮捕された。本当であれば前年比で経常利益が-120%のところを+300%と書き変えた。
オリンパスやカネボウも粉飾決済していたことが明らかになっている。
こうした企業だけではない。ギリシャ政府は財政赤字をひた隠しにし、現在のユーロ危機を招いている。粉飾決済もギリシャの財政赤字隠しも、通常であれば、すぐにバレるものではないという。会社であれば破産の危機になり、どうしようもなくなって監査がされる。国も通常は他国が監査することはなく、破綻寸前になって明るみに出たのだ。
こうした「バレなければ嘘をついて良い」という欺瞞体質は社会全体にはびこっている。それを考えると、スポーツの世界でだけ、常に厳しい検査に追い回され、違反すればほぼ全ての栄光を奪い去られてしまうのは、少し可哀想な気もする。
4. iPS森口尚史氏の問題で浮かび上がる学術社会での「ドーピング」
私は不正によって成績を上げることから「ドーピング」と呼ぶのが適切と思うが、森口氏の問題に絡めて改ざん捏造の問題を研究ロンダリングとして記事が掲載されていた。
学術研究の世界でもこうした「ドーピング」の問題は深刻だ。
森口氏の問題から分かるように、業績をアピールした者勝ちで、実際に実験をしていなくとも、それらしく捏造したデータがあれば、東大や東京医科歯科大学などの教授達を騙すことなど簡単なのだ。実際にこれまで様々な大学において何人もの教授、准教授達がこうした不正問題で処分されている。
東京大学では、今年の3月に非常に有名なK教授が論文不正で引責辞任に追い込まれている。教授が非常に有名であったこと、不正の規模が大きかったことなどから、生物学界を大きく揺るがす事件であったのだが、1年も経たないうちに森口氏の事件である。これでは東大のコンプライアンスが全く機能していないのをアピールしているような者である。ただし、これは東大に限った問題ではない。例えば、この東大のK教授の事件で、東大側では論文不正を認めているのにも関わらず、関係していた人物(現在は群馬大学教授)は特に何の処分も下されていない。
こうした科学不正にも、企業同様、通常はバレないという素地がある。つまり、実験に対して不正がバレる前に監査が入ることはないのだ。しかも、他の研究からある程度推測できることを捏造した場合には、たまたまついた嘘が真実である可能性があり、確認の実験をした際に捏造したデータに近いものが得られる可能性もあることが難しいという問題もある。
5. 「ドーピング」すれすれの「学術ロンダリング」
偽造するのは何も実験データだけではないことも明らかとなって来た。
近年、「学歴ロンダリング」という言葉が流行っているらしい。最終学歴を綺麗にする行為のことだが、iPS問題の森口氏が使っていた手口が分かり易いのでこれを例にとる。
1. 県立西の京高校(偏差値低い高校、しかし京大医、慶應医など受験し不合格)
2. 2浪で駿河台大学法学部(弁護士になると豪語)
3. 1989年(高校卒業後6年で)、東京医科歯科大学医学部看護学科
4. ハーバード大学客員研究員 (2ヶ月ほど)
5. 1999年、東京大学先端科学技術センター研究員(医療統計や知的資産管理)
6. 2002年、東京大学先端科学技術センター客員助教授
7. 2007年、東京大学より学位(博士号)授与
など
ここで注目したいのは東京医科歯科大学「医学部」の「看護学科」。医者になるのは医学部医学科で、こちらは難易度が格段に難しい。そこで医学部看護学科に入学して、「医学部卒」を名乗る。これは間違ってはいないが、普通の人は医者だと勘違いする。
ハーバード大学に関しても世界最難関の大学だということで、そこで研究できるなんてすごいと思ってしまうが、「訪問研究員」という身分は非常に低く、知り合いのコネがあれば、ほぼ誰でもなれると考えて差し支えない。
また、大学院を最終学歴に挙げている人は要注意である。通常、大学院の入試はどの大学でもきちんとしたテストはなく、ほぼ所属研究室の教授の一存で合格が決まっている。また、大学院で医学部を選ぶと最終的に「医学博士」という肩書きになるのだが、これは医者であるように勘違いするが、医者ではない。つまり、「東大卒の医者」的な学歴を手に入れたければ、どんな大学と卒業していようが関係なく、東大の医学部の先生と仲良くなって、大学院に入れてもらい、医学博士をとると良いのだ。芸能界でもこのようなことをやっている人がいるようなので、注意してみると面白いかも知れない。
6. 社会問題として考える
では、なぜこうした「ドーピング」やってしまうのか?
これはスポーツの世界も他の社会でも同様の力が働いていると考えられる。
アームストロングのドーピングを証言した元同僚達は、皆、ドーピングせざるを得なかった状況も告白している。ドーピングなしには他の選手と渡り合えず、プロになりたいのであれば、ドーピングするより他なかったというのだ。
他の社会も同じだ。成果が出なければそれ以降の援助が断ち切られる。そうしたプレッシャーにおかれ、成果が出ずに今終わりを迎えるよりは、一時しのぎだとしても今嘘をついてチャンスを得て、見つかるまで生き延びようとするのだ。しかも、すでに言って来たが、スポーツを除く、多くの分野では何がしかの違反や破綻が生じない限り、調べられる可能性が極めて低いという現状もこうした不正を後押ししている。
こうした過度の競争社会、成果主義におけるプレッシャーによって不正は後を絶つことがない。正直者がバカを見る社会構造になっていることは否めないのだ。スポーツの世界ではアンチドーピングが組織立てて行われている。他の社会においても現在のように野放しにするのではなく、定期的な監査によってドーピング摘発が適切に行われて、正直であることが正しい社会であり続けて欲しい。
<サクッとまとめ>
1. スポーツ以外でも「ドーピング」問題はあり、むしろそちらが深刻だ。
2. 森口氏によって科学者業界の闇が少し明らかにされた。
3. 多くの社会では定期的な「ドーピング」検査はなく、学歴すら、詐称スレスレの「ロンダリング」が可能である。
4. 社会全体として「アンチ・ドーピング」がなされ、正直者が得をする社会になって欲しい。