どうして?

…え?

何を言っているのか分からなかった

なんで私にだけ言うの?
私にさえ言えば良いと思ってるんでしょ?

そこで、初めて自分が綾香にどう映っているか思い至った

部活を辞めたことを詫びにきた…そう、“部長”の綾香のもとに

玲司は部長にさえ謝れば良いと考えている身勝手な男でしかなかった

しばらく時が止まったように感じられた

…違う!違うんだ!俺は部長に謝りたいんじゃない!…俺は“お前”に伝えたくて…

風が通り過ぎる


言葉に出来なかった
伝える勇気もなくて

私以外の誰かにもちゃんと言ったの?

…あぁ、Sには今日会ったから言ったよ

…そう

嘘だった
綾香に伝えることしか考えていなかったのだから、他の誰かに言うはずがない


俺はそれ以上言葉を出せなかった

ついた嘘も、確認すればすぐ分かるような空虚な代物
どこまで俺は愚かなんだろう

そして

彼女は一瞬寂しそうな顔をしたあと、ホームを去っていった

残された俺は、彼女をひき止めるにはあまりに無力だった…

続く
いよいよその練習会の日がきた

無事に練習は終わった

そして、帰路につく

大半の人間は電車で会場入りしていた

怜司は綾香と同じ電車に乗り込んだ

すぐ近くに彼女はいた

だが、車内では部員の目もあり話しかけることは難しい

二人とも降りる駅は同じなんだから、ホームで話をしようと決意していた

そして、ホームに降り立った

怜司は綾香に歩み寄った

実に二年半振りに話しかけたわけだった

「…なぁ、綾香」

「…何、怜司」

彼女の顔を直視する勇気もなく俺はまくしたてた

「あの時はゴメン!何も言わず部活辞めて…それなのに、今またこれ見よがしに歌っていて…ただそれを言いたくて」

彼女の反応は早かった

彼女の返した言葉に怜司は

…自分のしたこと全てが間違っていたことを知った

続く
何故、音楽部に逃げたか

答えは簡単だ

ある程度経験しており、周りよりも上手い自信があったからだ

最初は将棋部を辞めて音楽部に行くつもりだったが、退部する勇気もなく兼部という形に落ち着いた

やっぱり俺ってゴミだね

ふと思ったわ

そして、音楽部にも逃げ込むように籍を入れることになった

しかし、俺はここから変わっていった

環境に恵まれていた

音楽部の仲間たちには感謝してもしきれない

また、何も言わず見守ってくれた将棋部の連中にも本当に感謝している


なんやかんやで俺は将棋と音楽を両方やり遂げ、人間的にもだいぶ成長出来た気がする

そして、音楽部の活動の中には総合文化祭に他校と一緒に混声合唱をするというものがあった

そう

綾香のいる高校と一緒に…

続く