「この通り慎んで育てなさい。」と言われたところで目が覚めた。

 

有難く思い、その通りに育てれば、後に枝がたわむほど実って財産が増えて、金銀の花が咲いて実が盛んになるという。

 

直ぐに金持ちになろうと思うな。直ぐになろうと思うと貪欲という悪心がおこって、神々や仏は見放す。深く慎むべきことではないか。

 

名方長者丸

 

堪忍五両 朝起き三両 分別三両 正直五両 愛嬌三両 始末三両

 

この六つの慈悲をもって丸として、木綿の衣を着て、毎日朝の卯の時[1]に使いなさい。

 

ただし商人には愛嬌を六両にして算盤の粉を加えて、職人には始末を倍にして能力を加えて、武士には忠義礼智を加え、嫁奉公人には辛抱を加えればすべてに良い。

 


[1] 午前六時ぐらい

 

堪忍と辛坊ですが、これには色々考えるところがあります。耐えることは本当にいいことなんですかね。

 

やみくもに耐えろ、辛坊しろ、堪忍しろというのは筋が違うと思うんですよ。耐えるには将来への期待がなければできません。まずは僅かながらでも改善する兆しがみられるかどうかでしょう。理由も状況も訊かずにいきなりキレるってのは無様な極みですけどね。

 

で、愛嬌ってのは無自覚でムッとしたままの人っているもんです。本人はその気はなくてもですが、あれって損ですよ。あれは人から言われるときはよほどの事なんで、誰も気づかずにやるんでしょうね。