ゆるゆると工事がほぼ終わったころ、きちっとした身なりの武士が一人多くのお供を連れてお堂に参詣し、住職に対面を求めた。

 

「拙者は長い間浪人をしておりました。やっと主人を得ることができました。生活に苦しいときに、ここに寄進が多く集まったときに盗みに入りましたが、わずか三百目しかありませんでした。これでは望みもかないますまいと、もうちょっと預かろうとわざとうめいて捕らえられ、人々に信心を起こさせようと、五百貫目を借用しました。その借金で主君も得ることができまして、私たちがやっと安心して生活できるようになりました。これは一重にこの不動のお陰です。さて、この借りた五百貫目を倍にして、ここに千貫目を寄進いたします。これで、武運長久天下泰平をお祈りください。」

 

と帰っていった。こうして、当初の予定通りお堂を改築し、山や畑を買って繁昌する霊地となった。

 

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いやいや、いかにも江戸の戯作モノですね。

 

そんなことしなくても、そこそこ寄進のある神社仏閣ではこの時代はお金を貸すことはあったようです。