浪人の生活は、剣術の師匠、医師、手習いの師匠、人形細工、下は楊枝や耳かきを作って売る。それでも、上手くいかないものだからよくない事とは思いながら、無職でしっかりとした人はないわけではないがと杓子定規に思っていたが、強盗に盗人をするようになり、その末は試し斬りになって家名を汚す。こんなのは溜まったものではない。

 

近江の栗川の不動と言われているのは、その昔佐々木京極[1]の家臣であった岸川監物が、根来のきりもみの不動[2]を信仰してその仏像を寫したものを安置した寺である。この修復をすることになり、近隣に寄付金を求めた。名高い本尊であるので銭や米は思った以上に集まった。世間では五百貫目[3]ぐらいはかかるだろうと話し合っていたが、今の世の中にいない者はタバコを吸わない人で、寄付金が集まったのはやっと三百二十目[4]ほどである。これでは全く何もしようがない。開帳でもやって資金集めをしようと庄屋や村年寄りと相談して、それぞれ帰っていった。

 


[1] 京極氏(きょうごくし)は、武家・華族だった日本の氏族。

[2] 和歌山県岩出市根来2286にある真言宗の寺

https://www.negoroji.org/gokito-omamori.html

[3] 5万両、今でいうと10億円ぐらいか

[4] 32両ぐらい。600万円ほどか。

 

今でこそ寺社仏閣は宗教施設であるので、寄付金はなかなか出しにくくなりました。建築屋さんであれば、多少の値引きという形で出せますが、普通の会社特に上場企業になると寄付金もなかなか株主の同意を得られなかったりしますので、広告宣伝費の名目で出すことになります。

 

一応租税では、租税公課として一部は税金控除の対象になりますが。

 

元々と言えば巨大な公民館的な位置づけ、神主・住職はそこの管理人的な位置づけだったので、まだ今よりは寄付金は集めやすかったのではないかと思います。

 

が、この金額はないわなぁ・・・

 

で、浪人経験あります。大学受験でぼろ負けして浪人しました。何をするにしても職業欄に無職と書くこの残酷さというか、社会からの疎外感というか。あんな思いは申したくないですね。早く大金を貯めてリタイヤしたい気持ちはありますけど。