楽天勧学[1]の文に、「田はあっても、耕さなければ倉は空のままである。書物はあっても教えなければ、子孫は愚かなままである[2]」とある。どんな仕事も怠っていれば、耕したところで実ることはないだろう。教えても心に富めるようにしなければ、灯りのない夜道を歩くようなものだ。

 

この本は「渡世伝授車」というからと言っても、人が知らないようなことを伝えて金が溜まるという話ではない。ただ自分がこれまでの仕事で、工夫してきた車である自分が天理に叶って、金持ちになった人たちからその経緯を聞いて集め、人々の心得になるようにと、短い文で五巻のわらえるものにして、花咲く平和な時代を楽しんで欲しい。

 

元文二年[3]巳十二月吉辰  洛下[4]  都塵舎

 


[1] 白楽天のことか。

[2] https://trc-adeac.trc.co.jp/Html/imageView/0821105100/0821105100200010/259-17/

[3] 西暦1738年

[4] 京都

 

心学の多くは、文化文政から天保にかけてのものが多いのですが、今回はその100年ほど前になります。本当に草創期のころの作品んです。

 

こうやってみると、一貫して金儲けというか商人の心構えが中心なんですね。