街の中で商を仕事にしているのも、安定している世の中からご恩を受けて人々に使われるのであるから、自力だけではその仕事は上手くいかない。常々人の出入りが多くにぎやかであるのはめでたいことと思い、その土地でもよその土地でも取引を素直にして高い利幅をつけず、家内倹約を守りその行を勤める人が、財産を蓄えるようであればそれは国の宝である。冥加にかない長く繁栄するだろう。

 

農家は炎天下や極寒であっても嫌がることなく、畑を耕すために体を使う。だから、食事をするごとに彼らの仕事の苦労を思い浮かべなさいと、昔の人は誡めている。町人の家では寒いときは衣類を重ね着して、暑いときは家の中で安穏として仕事をするのは、上の恩恵を頂いて初認を助けてきたからである。心得の悪い物は、この点を弁えないことから、嘘を言って利益を貪って人を騙して威張るのは、冥加が尽きるのを分かっていない。よくよく心得を正しくし、取引などで不実をしないようにしなさい。

 

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このあたりはまさに日本的というか、衆生の恩がそのまま表れています。外国では、こういう辛くて汚い仕事は、身分が卑しいからだ。それは前世の因縁である。だから、こういう生活は前世で償いだから。と、さげすむ風潮があります。日本でもバブル期に一時期そんな風潮がありました。三高だかなんだかで、現場作業を馬鹿にして海外移転を進めた結果どうなったか。

 

我が世の春を謳歌していた金融機関はボロボロ、挙句の果てに工場は戻ってこず、日本の国力低下につながりました。なんだかんだ言いながらも、こういう現場がないと国家は成り立たないと思っています。

 

ただね、苦労したから偉いのか?というとそんなことはない訳でして、もっと楽して生産する方法を考えてもいいと思うんですよ。特に農家は。いつまでも昔ながらのやり方を維持するために外国人実習生を入れている、これはどう見たっておかしい話です。働く人が最も嫌がる辛い部分を機械化するなりなんなりについての努力のほうをすべきだと思いますよ。