父母に孝行して仕事に励み、驕らず法を守り善事を行う人は、まことに国の宝というべきだ。

 

上より田畑を預かり、父母妻子を養うとなれば、油断なく耕作して修理に念を入れ、昼間は畑で仕事をし、夜になれば家で縄をないむしろを編み、草履草鞋を作り、畑仕事の道具を作りなさい。全ての農業用具は農家にとって第一の宝である。農家の宝は即ち国家の宝でもある。厚く互いに男女ともに仕事に励み、年貢も支払いが遅れることもなく、規則を守り、友人に会うときは作り方について上手くいったことを人に語り、他人が作ったものについて詳しく聞いて自分も取り入れようと努力して、他人も自分も良くなるようにしようと思い、さらに天地日月のご恩を忘れてはならない。体には二つの目があるが、日月のひかりが届かなければ盲人と同じで見えない。

 

天地の御恩は例えようがない位大きい。無駄に過ごすことなくしっかり仕事をしなさい。

 

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宝だという以上、実際にはなかなかそうはならないというのが現状でして。

 

これを見ると今の日本の土地所有の感覚と随分違いますね。基本的に日本人の土地所有感覚は、江戸時代まで耕作する権利と住む権利があるにすぎず、たとえその権利を売却しても数十年たっても買い戻す権利も同時にあったようです。またほんの数百メートも離れていないところでも、水の引きやすさや土地の肥沃度が全然違うので、耕作する土地が一定期間過ぎるとガラポンで割り振りしなおすこともあったようです。それが割元と言われる村役人(≒庄屋)の仕事だったようです。

 

だから今のように先祖伝来の土地だから絶対売らないというのではなく、公共のためなら融通し合うということが当たり前だったようです。