玉は砕けてもその輝くは失わない。竹は焼けてもその節は消えない。これは義人の言葉で、善の道であるが商家はその義を強くすると、あまり堅くなって中道にはなりにくい。だからこの本では、まずは正直を第一にして柔和になるようにして、自分を押し出さずに遜り、物事を他人に譲り、自分の身分をよく弁えて、大身を得おきるようなことはしない。仮にも嘘を言わず、利益を先に考えて義を忘れないようにして、人が来るよりも早くでて、応対も無礼がないようにして、大げさに言わず、静かに対応して挨拶や客あしらいを柔和にして、この理屈を味わって実行すれば、万民繁昌するのは必然のことである。商売教訓鑑と名付けて商家を長く守ろうというのは、最初から末まで実行して欲しいという思いで書いている。

 

安永三年[1]春  木南子 述

 


[1] 西暦1774年

 

日本国内では、ほとんど愛想のない店員がいる所はありませんが、ごくたまに当たることがあります。とんでもない従業員を雇ったもんだよなと思っていると、意外にも店主だったりすることもあるんですよ。おそらく秩禄処分の時に始めた武士もこんな態度だったのでしょう。

 

昭和の時代までは直接その場で店員に「ふざけるな」とやり返すだけで済みましたが、平成の中盤辺りから書き込みサイトが増えて、そのまま書かれてしまうことが多くなりました。そうなると、なかなか消してもらえないので悪影響は長期間にわたって残ることになります。

 

ただ問題は、中途半端な田舎だと他に店がないので、競争が働かずそういうとんでもない店が残るのと、店はそういうものだと思い込んでいる地元住民ばかりなので、よそからの資本が入っても地元住民を雇うと、そういうどうしようもないことになってしまいます。小中学生で挨拶をしっかり覚えさせていないとこうなるんですよね。

 

ある一部上場の会社がその田舎に出店しましたが、従業員が接客態度が悪すぎて本店にクレームがいき、本店からエースが来ましたがあまりにも従業員の態度が悪く、物を覚えない、接客が悪いと半年で辞表を書いて転職したことがありました。こういう商品はありませんか?と丁寧に訊くとカタログも見ずに「そこになきゃ、ね」と。これが普通の地域ってあるんですよ。驚くことに。残念なことに、こういう態度の悪い人って自分が態度が悪いとは微塵も思ってないんですよ。むしろ煩いことを言われた、面倒なことをさせられたと被害者意識丸出しなんですよ。

 

その店は出張客や転勤族が来る店でしたが、2年持たずに撤退しました。人が駄目なら何を用意しても駄目なんですよね。