昔、無可有の郷[1]に龍蔵と虎蔵いう者がいた。この二人ともこの地方では、家が豊かで村役人を勤めていた。二人とも勢いがあって、互いに威勢を争って自己主張していた。龍蔵は虎蔵の上に立とうとして、虎蔵は龍蔵の上に立とうと互いにけん制し合っていた。

 

そうなると互いに頭を下げまいとして、昔であれば互いに一尺ずつ頭を下げていたのだが、龍蔵は九寸下げると虎蔵は八寸下げる。これに龍蔵は怒って次に出会ったときは五寸より頭を下げず、それを見て虎蔵は大いに怒って三寸も頭を下げない。

 

今度はこれに龍蔵は怒って、次には一寸も頭を下げなかった。虎蔵は怒って一厘も下げなかったので、龍蔵は次に会ったときは二三寸反り返った。虎蔵はこれに対して一尺反り返った。

 

龍蔵は益々怒って次のときにはどうしてくれようかと、互いに自分のことはさておいて自己主張ばかり。同じ役職の立場であるのでその後に会って龍蔵は、次に会ったときいつもの通り、虎蔵より半時ほど先に行って頭を反り返り、畳の上で横になり手枕して、

 

「これはこれは虎蔵殿お出ましになったか。」

 

と挨拶すると、虎蔵は驚いた。今日は先を越されたか。この上は畳をひっぺがして、スノコの上に仰向けになってやろうと思った。ふと注意して後ろへ反り返る頭も、結局前に俯くのも同じことで、反り返るのは逆に苦しい。

 


[1] 「無何有の郷」をもじったものか。『荘子』の「応帝王」の一節で、自然のままで何の作為もない理想郷のこと。

 

先日に弁護士迄乗り込んでいったおバカさんもそうですが、夫婦喧嘩とかママ友どうしのマウンティングもこういう心理なんでしょうね。特に、女性同士のマウンティングは傍で見ていて露骨すぎて分かりやすいです。

 

嫌なら離れればいいのに、あいつのせいでどうのこうの。先に挨拶したのに挨拶しなかった、だから今度は挨拶しないとか。なんでそこまでして嫌な奴の事を意識し続けるのか全く分かりません。

 

そんなの聞かされる方としてはたまったもんではありません。第三者が迷惑するのでやめてくださいね。女性同士では話を合わせているので、自分が勝ったと思っていても「裏で馬鹿じゃね?」と思ってますから。