昔斎の桓公[1]が管仲[2]に向かって、君主として尊むことは何か尋ねた。これに管仲は「君主として尊むことは天です。」と答えた。桓公は天を仰いで天に拝んだ。管仲は「君主が尊むのは青々とした天ではありません。仰がずに下を向いて下さい。君主が尊む天とは、民百姓のことです。」と言ったそうだ。

 

君主として常に下を見て、民百姓を可愛がることが、天に仕えて国を保つ出世鯉である。ただ上を向いて目を向けているようでは、誠の道を進めない。

 

世の人の 上に目がつく 横に行く 葦間の蟹の あはれはかなき

 

世の中の人は自分の分限より上に目が行くと、不道徳になり目が横に行くものである。目が横に行けばたちまち身を滅ぼすことになる。だからこの爺さんがこの絵の趣旨を狂歌に読みましょう。

我意をすて 身を遜る 堪忍の 誠は 代々に 身を立つる鯉

 

とかく我意をすて頭を下げるのが安全で、世の中の人は我慢したり頭を下げることを嫌い、反り返って後ろに倒れ、身を失う人が世の中には多い。

 


[1] 桓公(かんこう:?―前643年10月8日)は、春秋時代の斉の第16代君主。管仲を宰相にして斉を強大な国とした。

[2] 管 夷吾(かん いご:?―前645年)のこと。中国春秋時代における斉の政治家。

 

これには凄い体験がありまして、ある人が思いっきり因縁をつけてきて、日常的に「頭を下げろ」「土下座晒せ」と怒鳴った人がいまして。完全に逝ってましたね。それでいて自分は被害者だと大騒ぎして弁護士にかけ込んでいったようです。相手にされなかったようですが。

 

人に向かって、しかも成人に向かって言いますか?と。おそらく自分の子供にもそこまで言ったら、グレますよ。やるなら自分の意志で強制されるものではありません。

 

これが礼儀だろばかりに人に向かって言うのは、狂っています。狂っている人には近づかないのが一番です。