総じて、主人や親の立場として子供または奉公人が悪いことをしたとき、折檻として殴ったりつねったりする人がいる。これは非常によくないので絶対にしてはならない。昔の子弟従者に教え戒めるといって杖で叩いた例もあるが、今は賢いので殴ろうものなら却ってひねくれてますます悪くなることはあっても、よくはならないだろう。悪い点があれば、成長中のものにいい気聞かせるように、秘かに呼び出して丁寧に言い聞かせれば、だいたい言い聞かされる方は申し訳ないとばかりに改めるほうが多い。その上たとえどれほど金持ちであっても、下々の身として子弟従者を殴るのはとんでもないことだ。もし間違って殴ってしまって、丁稚や子供や下女がそれで死んでしまったらどうするべきか。もし軽くやったとしても、ひねって転んで急所にでもぶつけて死んでしまっては、言い訳はできないだろう。ここはよく考えるべきだ。こういうことをやってしまうのは、人間の生死の道理を理解していないからだ。だいたい人間というものは殴らなくてもいつ死ぬかわからないものだ。だからその者が死ぬ時期に殴るような目にあわせたらどのようなことになるかわからない。こういうことをよく理解しておけば、とんでもないことをしないだろう。

私が若いころ、ある田舎に大商人がいた。その手代が丁稚を叱るときに殴ってしまった。その時当たり所が悪かったのだろうか、それともそれが運命だったのか、急死してしまったのを急病で死んだと嘘を言って秘かに処理をした。主人はそのことを全く知らなかったが、天罰からは逃れられなかった。やがてその秘密がばれて、殴り殺した手代は死罪になり、主人の店は破産し流浪していると伝え聞く。

こういうことからも人を殴ったりつねったりすることは、とんでもないことであると理解しなさい。

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このところ国会議員が秘書を殴ったとか暴言が酷いとか、話題に出ていますが、別に保守系だけじゃなくて左派系も酷いですよ。なかなか表に出てこないだけでブラック労働環境なんかは当たり前みたいです。

しかし、従業員がころころ変わるのは、明らかに上司の責任ですね。殴ったからと言って怒鳴りつけたからと言って直るものならいくらでも殴りなさいな。

私の上司にもそういう人がいました。得てして、そういう人は自分がどう評価されるかの基準でカッとなってやります。これは恨みを買うだけですからね。でも本人はそういう感覚が全くなく、自分は親切だとすら思っていることが多いんですよ。