このように穏やかで貞淑であれば、女としての徳を守っていると言える。女はこの一徳で他には特に必要はない。昔の人が語った言葉には、東国の金持ちの後家さんが京都に見物にやってきたことがあった。この後家さんは行儀正しい人だったので、常に夫の姿を描いた絵をかけて置き、その夫に仕ええているかのようであった。国元を出るときも、この絵の像の前に手をついて

「私このたび京都に見物に行きますが、どうかお許しください。」

といい、

「さて遠路ご苦労かもしれませんが、旦那さんも一緒に京に向かいましょう。」と道中常に籠の中にかけて置き、生きている人に対するように挨拶など怠ることがなかった。京都の旅館でも床の間にかけて置き、朝晩見物に出かけるときも帰るときも、今日はどこに行ったか、ただ今帰りましたと丁寧に話しかけていた。一つ一つの行儀は言うまでもなく、あまりにも多いので略した。

この人は二十五六歳で後家になり、一人娘と養子を貰った。今では十三歳にもなる孫がいて、何の問題もなく家は栄えているという。これはひとえに後家さんが徳を正しくしていることが原因だ。世の中の後家はこの人のようにすればどの家も治まるだろう。これは良い証拠だろう。世の中は広いのでこのようにありがたい人もいる者だ。

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これはまた極端な・・・

確かに嫁に来て、夫にすぐに死なれて夫の財産と店を継ぐとなると、後妻業と疑われなくてもヤッカミで散々言われるでしょうから、注意するに越したことはありません。

さて昨日の塾の先生がなくなった後を引き継いだ奥さんですが、夫の時はみんなすぐに動いたのに、自分が引き継いだ後は言うことを聞いてくれないとかんかんだったそうです。詳しい話は分かりませんが、亡くなった塾長握りがあって勤めていた人ばかりでしたから、それがなくなればよほどの義利か恩を感じてなければ動きませんよね。

残念なことに、奥さんはそれが分かっていなかったようです。