世の中にあをち貧乏といって、財産が足りずにいろいろもがいているものがいる。もがくほど火の回りが早く熱くなるという例えである。また炭をおこして強く扇げば、扇ぐほど急に減るという意味もある。面白いことをたとえている。なおこの類の例えがある。

ちょっと前のことであるが、越後椽(えちごのじょう)と言って、からくり人形の首引き[1]を見た。この人形見物の首引きをすると、何人かかっても人が引くほど強くなって、あちらに引っ張られる。これはろくろ仕掛けのからくりであるので、引くとかえって強く引っ張られる。引かなければそのままである。これを比べて言うと、人の手に持っているものを取ろうとすれば、相手はますます強くなって離さないものだ。自分のほうがとろうと思わなければ、あちらは手を放すようなものだ。

総じてこの例えは、多くとろうとすれば却って苦しくなることをいう。貧乏だけではない。すべてのことに通じて、これに非常に似ている。この意味をよく考えて行えば極めて役に立つ例がある。その証拠をすべて上げる暇はないので省略する。

よく注意して工夫しなさい。

 


[1] 輪にしたひもを向き合って座った二人の首に掛け、互いに引っ張り合って引き寄せられたほうを負けとする遊び。くびっぴき。

 

「慌てる乞食は貰いが少ない」ってことでしょうか。

何とか損を取り戻そうとして、投資なのか投機なのか、よくわからないまま金を突っ込んで破綻するという話はよく聞く話です。貧すれば鈍する、鈍すれば貧する訳でして。

投資詐欺に引っ掛けられた人は、また引っ掛けられるのはこういったのが原因なのでしょう。パチンコにはまるがギャンブル依存症みたいなもんなのかもしれません。