金持ちの性格は特別のものがある。上京あたりにある老人が隠居していた。銀十貫目をよけておいて、この利息を小遣いとして定めて息子に渡しておいて、その夫婦は食べる分の米を一斗か二斗ずつ時々取り寄せて、銭百文ずつこれも時々息子から小遣いをもらい、この利子を一銭も取らずに息子に預けてこれを全く使うことはなかった。

あるとき隠居を勧めれられて土蔵を八畳敷きでと、しかるべき人が言った。するとその老人は、

「息子は実直な者なので今一代苦しむことがあろうか。多分、孫は売るだろう。そのときの買う人のため、売る人のため、十畳がいいでしょう。」

と言って、十畳で建てた。なるほどと思ったものだ。

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映画『マルサの女』だったかと思いますが、金持ちになる人とそうでない人の違いを語るシーンがあありました。

 

確か山崎努が演じる脱税する男が、宮本信子に語るシーンで、

ここにあるコップに水がポタっと落ちてくるとする。貧乏人はそれがコップにたまる前に飲んでしまう。

そこそこの金持ちは、コップにたまるのを待ってから飲む。

本当の金持ちは、コップからあふれて足れる水を飲むんだ。

 

と語るシーンがあったと記憶しています。あれは衝撃的でした。この話はそれを思い出させます。