私はいやしくも幸運があって、四民相応の道徳書を作ろうという思いがあった。心得があって道徳書を書こうとする人がいれば、私も冥加にかなってやってみようと以前から思っていたことを叶えたいものだ。またある人が言った。「世の中に中流以下の者は、上流の者を嫌い、下や上の者を嫌う。大衆はこんな感じなのでその身分相応に平等で楽しみがある。これが天道であろう。」

私もこれに興味深く思って筆をとった次第である。

夢想午の十一月十一日の夜

部屋の戸を開けたように明け方の雲から現れた月はいいものだ。

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これは今の日本人がすっかり忘れてしまった感覚でしょう。日本は身分制度があってがんじがらめに、無礼討ちは日常みたいな感覚ですが、日本は身分格差はよその国から比べれば殆どない社会でした。京都御所に行って御覧なさい。貴族の屋敷がこんなに小さいのかと驚きますから。江戸時代は身分制度が厳しいというのは、明治政府とGHQのプロパガンダなのです。むしろ職業の違いぐらいと思った方がよろしいかと。

もし身分ががんじがらめであれば、中流の者が上級下級の者を嫌がるということはないですから。