ツイッタイマン!! 小説ブログ

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南大阪6市を制した矢崎は高校卒業後、喧嘩無しで生きていた。ある日、高校の同級生「けー」から南大阪8市を制したOBが北大阪の男に敗北した事を知らされる。
ツイッターによって、高校では会えなかった強敵に直面していき、やがて北大阪VS南大阪と発展していく。

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マークⅡバン。通称、マーバン。英二の車だ。真っ黒に黒光りさせる様に塗装をしている。これが、柏原西の通学の坂を一気に下る。いつも下校していたこの坂をこれだけ速いスピードで下るのは初めてだ。ただ、この坂を下って喧嘩をしに行くのは、何回目かはわからないが。

「あいつ何してんねん!」アクセルを強く踏みながら英二が強く言った。

「あのアホ!けー、あいつのツイッター見てや、何がどうなってる?」まっくんが英二の怒り口調に続く様に言った。

「うん、今戸塚のフォロワーから探してる」

「なんやねん、あいつ。一人で行くん好っきやなー、ボケナスが」俺は少し落ち着いていた。どれだけ大垣の事を言ってもあいつは・・・・。

「ああ、たぶんこれや。@Oogakikasiwara。あいつツイッターなんかせぇへん性格やんな?」

「最近のツイートは?」英二が急かす。

「戸塚に送ってるわ。“俺、矢崎んとこの№4やけど矢崎にとりあえずお前潰せ言われてるから、まず俺んとこ来いや”ってツイートしてる」

「おもいっきり嘘ついてるやん。俺何も言うてへんやん。嘘王や。嘘王。筆王とえらい違いや。」俺がふざけると、

「嘘王のアプリ欲っしい~。」英二もふざけ始めた。

「(笑)何に使うねん!そのアプリ!」ここでまっくんのツッコミが入り、

 「そんなん言うてる場合ちゃうて。アクセル!いっぱい踏んで」とけーが真面目な方向へ話を進めようとする。

「了解!」ここで俺はしっかりとベタなボケをいれる。

「お前ちゃう!!」最後はけーのツッコミで終わる。

変わってない。高校の時も、喧嘩しにいく時はこれだけふざけあいながら行っていた。違うのは、ツレがやられた画像を見て喧嘩をしに行くという事。携帯も進化したものだ。リアルタイムでツレが負け、倒れた画像を見れてしまうのだから。

  大垣進が、朽ち果てて倒れている。そんな画像を。

  その画像を見た時、すぐに場所が特定された。

大垣は芝生に倒れていて、後ろには見た事のある木製のベンチが映っていた。

 

今下っている坂には、坂に沿って線路があり(JR小和路線)、それに沿って182号線、そしてそれに沿って小和川が流れているが、その向こう岸の河川敷は広場になっており、そこでよく仲間とたむろしていた。そこにある木製のベンチ。画像を見た時、全員がすぐにわかっただろう。

この河川敷広場へ行くには、まず通学路であったこの坂を下り、少し先を左折、国豊大橋を渡り、向こう岸の川沿いにある階段を下りる。

マーバンが坂を下りきり、その国豊大橋に入った。そこからその広場を見渡せる。

運転席の英二以外、助手席側の窓から木製のベンチを探した。

「大垣おるぞ!倒れてる!」

 助手席側の後部座席に乗っていた俺も雅貴が叫んだと同時くらいに倒れている大垣の姿を見つけた。隣に座っていたけーも国豊大橋に入った時から俺の方の窓から河川敷の方をずっと見ていて、たぶん大垣の姿は見つけていたのだろうが、言葉を失っている感じだった。

 「大垣だけ?」英二があまり状況を見れないので聞いてきた。

 「他は誰もおらんな」まっくんが答えた。

 「帰ったんか。けー、ツイッターでその戸塚とか言う奴にどこおるか聞いてや。矢崎が聞いてるって入れたらええから。」

 「オオ。」

国豊橋を渡ったところで左折し、川沿いの道路に入った所で車を停車させたと同時に全員、車を飛び下りた。

 「大垣!」まっくんが久しぶりで嬉しそうな呼び方で名前を叫んだ。

「お前、一人で何しとんねん!」英二も嬉しそうだ。 

大垣を見つけ、二人はそう叫びながら階段を下り、大垣の方へ走った。けーと俺は何も言わず大垣へと走った。俺は大垣に近づいてから、何か言ってやろうと思っていて、多分、けーもそう思っていたのだろう。

 しかし、倒れている大垣を目の前にして4人共、黙ってしまった。

ひどい。画像で見た時はこんなにひどくなかった。まず、何処から出ているか解らないくらい血だらけだ。体は小刻みに痙攣をし目は少し開いた状態で、少し左右に眼球が動き、眼だけが俺らに反応している様で、悲しい気持ちになった。

「もしもし、救急車の人?すぐ来てーや。国分の河川敷にありますやん、広場、・・・そんなんどうでもええからはよ来いよボケェ!!」

ドグシャァ!! 「ヴァアアラア!!」 ドガシャァァ!!

英二が救急車を呼んでいたが、怒りを抑える事が出来なくなったんだろう。怒鳴りながら木製のベンチを蹴りで潰した。

 「けー、ツイッター。戸塚から返ってきた?」まっくんが怒りを抑えながら聞いた。

 「まだやな」

 「しんや、まさかこれでもやらん言わんやろな?戸塚潰すやろ?」英二が俺を睨みつけながら聞いてきた。

 「・・・・・」

 「矢崎!!」

「・・・・戸塚っちゅうか、寝屋川市潰すやろ」

 「・・・始まってもうたなぁー、どうする?今日は大垣に付いとくか?何処

行ったか分からんし」まっくんが大垣を見ながらつぶやく。

 「俺は車でこの辺周ってみるわ、しんや、行こうや」

 「オオ。」

 ティントン♪ティントン♪

 英二と車へ向かおうと歩き始めた時、俺の携帯が鳴った。

 今、電話なんてどうでもよかったのだが、歩きながら何気にポケットから取り出し、相手が誰か確認した。

 ―着信 大垣進― 

 俺はとっさに振りかえり、倒れている大垣を見た。それから、拳を握りしめながら、通話をタップした。

 「はい」

『もっしぃ~』何だか腹立つ声が耳に入る。

 「お前誰や?戸塚か?」この一言で、英二、まっくん、けーがこっちに視線 

を運んだのが分かった。

 『何か冷静やなぁ、ツレやられてんのに』

 「あぁ?お前何処おんねん??」

 『ここ何処?わからーん!』

「その携帯返してもらいに行くから何処おるか早よ言えや」

 『今日は疲れたから帰るねんー』

 「わざわざ寝屋川から柏原まで来てもらっとんねん、まだおもてなし出来て

へんからな、戻ってこいや。」

 『疲れた言うてるやろ?んん?ああ?』

    タタン・・タタン・・・タタンタタン・・・

    その時この河川敷から川沿いにある鉄道橋に河内国時方面(奈良方面)の列車が通り過ぎた。 

    タタンタタン・・タタン・・タタン。

その列車の音が、自分の携帯の受話口に近づいて来る。

「・・・・、そこで待っとけボケナスァ!!」

―― こいつは国時駅にいる。―― そう思った瞬間俺は叫んだ。。

 「何処や!?」英二が俺に近づきながら聞いてきた。

 「国時駅や!」

「けー、大垣頼む!」まっくんがけーに叫んだ。

3人共、土手を一気に駆け上がった。

 

柏原西高は、最寄のJR高井戸駅を下車すればすぐの坂を10分程上り、山の上にある高校だ。通学の道が坂なので朝、よく前を上っている女子のスカートを覗いて仲間達と盛り上がっていた。少し離れているが、もう一つの最寄駅、近鉄国時駅があった。俺は近鉄の方から通っていたのだが、近鉄を利用して通う不良グループを近鉄軍団、JRを利用して通う不良グループをJR軍団といい、入学当初は2つにグループが分かれていた。まず1年の1学期に近鉄軍団とJR軍団の抗争があり、近鉄軍団がJR軍団を制した。その抗争が終わってからは、JR高井戸駅近くで朝、JR軍団と合流してから学校に行く様になった。JR軍団だったけーは、その頃からの友達だ。

ヴーン。

色々思い出している最中、けーのスマホのバイブが何回か鳴っていた。そんな事は放っておいて過去をもう少し旅行したかったのだか、けーが、スマホをポケットにしまいながら話かけてきた。

 「矢崎、あのな、長浜と、横田がこっち向かってるって」

「何で?学校見に行くだけやで?」

「戸塚のツイート見たんやって。で、俺が矢崎とおるってツイートもしてたし、確実に今日やるんや思ったんやって。」

「やらん言うたんか?」

「言うたんやけど、来るって。矢崎の事やから気が変わるかも知らんて」

「なんでやねん」俺はちょっと軽めにツッコミを入れ、また正門へと向かった。

 

学校の正門へ着き、けーと過去の旅行を楽しんでいたが、正門沿いにある坂を上ってくる車のライトの眩しさでつかの間の旅行は中断させられた。その眩しさに負けない様、目を限界まで細めた時、助手席の窓から「しんや!」という声が聞こえた。まっくん(横田)の声だ。運転しているのは英二(長浜)だろう。この長浜英二と横田雅貴の二人は地元が一緒なので、そこまで久しぶりでもない。地元が一緒どころか、この二人とは幼稚園から一緒で、幼馴染だ。小学校の頃からよくこの2人と一緒に他の小学生と喧嘩をしていた。

この3人の中で1番強い奴が誰かは決めていなかったのだが、中学2年の時に、英二が好きな女を「大阪産もち豚」と俺がからかった事が原因で喧嘩になり俺が勝ってからそういった順位がついた。英二とまっくんがやりあったのは見た事がなく、中学3年の時に、まっくんが負けた他中の奴を、英二が一人で報復しに行き、勝ったことがあり、自然とまっくんより英二の方が強いとなっていた。

 

車は正門の向かいにある3台の自動販売機の前で止まり、2人が下りてきた。

「やるんか?やるんか?」助手席から降りてきたまっくんが笑みを浮かべながら、言った。

「どうすんの?」英二も少し笑みを浮かべ、やってもやらなくてもどっちでもいい様な雰囲気で聞いてきた。

「やれへんよ」俺は、少し力の無い声で言った。

 

「そっか。まあ高校卒業したら喧嘩も卒業言うてたもんなー」英二が言う。

そう言えば、英二には高校3年の時によくその話をしていた。

「なーんや、久しぶりに暴れられる思ったわー」まっくんはそう言ったが、喧嘩をしにきたより、むしろ俺とけーと単純に会い、喋りたいような感じだ。

喧嘩をしない事を逃げていると感じているのはけーぐらいだろう。

「けー、ええやん。この喧嘩にのったとして、勝っても負けても何も残らんやろ?」けーに解って欲しくて俺は投げかけた。すると、

「いや、俺は別にええんやけど。」本当の気持ちを抑えつけながらけーが言う。

「何?けー、喧嘩したかったん?戸塚に負けるでお前。俺にも負けんのに」

まっくんが少し挑発的に言った。

「今やったらわからんでまっくん。高1の時に1回勝ったぐらいで調子のんなよ」

「何や?けー?ああ?今やるか?」

「ようしやったらぁー!ゴフッゴフッゴフッ」けーは自分で自分の顔面を殴った様に見せて倒れた。「ぐわー、強いのです。あなた、強いのです。」

「ハハハ!!」このお決まりの芝居でいつも笑いが起きる。

この芝居をやるようになったのは、高1の時、近鉄軍団VSJR軍団の抗争が終わり、後に№2、3を決める際に(抗争時に俺はJR軍の大垣進(柏原の国分中学№1)というJR軍団№1に勝っている)近鉄軍団№3まっくんとJR軍団けー(JR軍団は№1が大垣進という事だけ決まっていた)がやりあい、けーが負けて以来、ずっとだ(この時、近鉄軍団№2英二と大垣進がやりあって英二が勝っている)(後に大垣はまっくんに勝利)。

それからというもの、どこかの高校とやる話の中でまっくんが今の様に挑発し(当初のまっくんはマジだったはず)、

けーがそういう芝居で返した。周りが爆笑し、それからもう何十回もこの芝居を観覧させられている。

「飯食うたん?」笑いが1段落し、英二が言った。

「おお、さっき軽く。けーと鳥家族で」

「俺ら食うてへんねん、もう食われへん?」

「俺は食えるで。けーは?」

「まぁ、何とか」

「何行く?けー、久しぶりやんな?」まっくんがけーに問いかける。

「まっくんとは、卒業旅行以来・・ヴーン」けーのスマホが鳴った。

「もしかして戸塚からか?」英二が少し真面目な顔で言った。

「・・・やばい・・・嘘やろ?」けーがスマホを睨みながらつぶやいた。

けーのこの言葉で3人全員、喧嘩モードの血が流れた。

                2  №,4の負け戦

 

 

 「くお~!うまい!」けーは、空の生ジョッキをコツンとテーブルに置いた。

「おっさんやん」ホッケをあてにしてビールを飲み干すけーを見ると、俺はそんな言葉しか思い当らなかった。

難波を離れ、久しぶりに母校(柏原西)を見ようと柏原にやってきたが、

けーがどうしても1杯飲みたいとうるさいので居酒屋に入った。

「なー、」けーが少し顔を赤くして言った。

「矢崎、高校の時言うてたやん。北大阪の奴らともやってみたいなって。別に社会人やろうが、やってもええんちゃう?団体戦で決着付けてる奴らもおるみたいやし、もしやるんやったら俺は高校の時みたいに矢崎についてくで。」

「もうええいうねん。俺は高校卒業と同時に喧嘩も卒業したんや。そして大学に入学したんや。」

「してへんやん!思いっきり就職したやん!」けーが酔っていてもしっかりしたツッコミで返してくる。

「お前も、工場就職したやんけ。喧嘩無しで、のんびり暮したらええやん。気楽でええやん」なぜだか、少し拳を握りしめながら俺は言った。原口という男の目が、俺の記憶から今の俺を睨みつけるからだ。

「いや、俺もツイッターでこんなんやってるって知らんかったら言うてないってー。これ見てみ、矢崎。ツイッターで矢崎の名前検索したらこんなにヒットすんねんで!」けーはまたスマホの画面を俺の顔に近付けた。

 

 ツイート 誰か南河内の矢崎の居場所知ってる奴おらん?

 

 ツイート 柏原西高の矢崎って知ってる?げっさ強いらしい

 

 ツイート 矢崎!殺す!

 

ツイート 吹田で頭張ってんねんけど、南河内の矢崎がこれ見てたら連絡せえや。

 

驚いた。と同時に、何故か少し笑えてきた。何の笑いかは解らないが、ちょっとした有名人の様で、気分は決して悪くならなかった。

 

ヴーン。

「あ、リプライや」けーが、俺に向けていた画面を自分に向けながら言った。

「なんやねん、リプライて」最近のスマホに付いて行けてない俺は少し苛立ちをみせながら聞いた。

「リプライっていうのはな・・・・」けーが何故だか止まる。

「なんやねん、途中で急に止まんなや。お前、コンセント外れた掃除機か?リプライってなんやねん、教えろや」

「・・・悪い・・・・矢崎・・」さっきまでのけーの表情が、一瞬で真顔に変わった。俺はだいたい察しはついた。なぜなら高校の時、けーが原因で喧嘩になった時は、「悪い・・・・矢崎」と必ず言っていたからだ。

「けー、何や?喧嘩か?」

「矢崎、すまん。戸塚真己がこっち向かってるって」

「誰やねん!それ!」

「あの寝屋川の。原口やった奴」

「何で名前知ってんねん?ちゅうか、何で俺らの場所わかるんや?」

「いや、今リプライで名前は言ってた。場所は・・・悪い・・・店入った時に矢崎と飲んでるってツイートしてんけど、位置情報もツイートしてもうたんかな?あんまりツイッター使い方わからんねん。」

「ボケ!!」

と言いながらも俺は少し血が騒いだ。高校の時だったら戸塚という奴を待っていただろう。でも何か、何かが俺を止めていた。

「とりあえず出るぞ」

「了解。」こう言ったけーの目には少し、逃げるのかという視線が混じっている様に思えた。

勘定を済ませた後、少し周りを気にしながら母校へ向かった。

「もうツイートすんなよ」

「わかってるって」けーは、少し不機嫌そうに言った。

「ツイッタイマン」

 

        1 OBの負け戦

      

ツイート 強い奴おる? 俺より強い奴。歳は19歳や。高校でNO1やったんやけど、自分の力試したぁーてなー。誰か相手してーや。

 

リプライ(返信)お前何処の奴や?何高のNO,1やったか言えや。自分の高校だけ占めてたぐらいで何をいちびっとんねん?

 

リプライ(返信)ああ!? お前こそ何処の奴やねん? 俺は・・・・・・・

 

SNSで人気のアプリ「ツイッター」これが大阪で喧嘩の相手を探す為にツイートし、タイマンを張る事が流行りだしていた。

 

「ういーっす」

大阪難波という人が集まる賑やかな街で聞き慣れた声が耳に入った。高校の時、一緒にヤンチャしていた仲間、中江圭祐だ。今年の卒業以来、俺はとび職に就き、忙しく、ゆっくりコイツと会うのは久しぶりだ。卒業旅行以来になる。

「久しぶりやな、けー」

けー。これがコイツのあだ名。けいすけの「け」をとっただけ。楽でいい。高校1年の時に知り合って、最初はこのあだ名を圭祐は嫌がってたのだが、呼ぶうちに慣れてしまったんだろう。今は当たり前の様に返事をする。

「おお、久しぶり。今日あっついなー」と言いながらけーは額から流れる汗を小指で拭った。コイツは何故か小指で拭う。高校の時、敵対する高校との喧嘩で流した血も小指で拭っていた場面を思い出した。

「坊主やから涼しいんちゃうんか?」少し笑いながら俺は言った。「坊主関係ないねん。いっその事スキンヘッドにしよかな」

その言葉で、けーのスキンヘッドを想像して笑ってしまった。正直、坊主しか似合わない顔だ。いや、厳密に言うと、茶髪で坊主しか似合わない顔と言った方がいい。眉毛も1度剃ったら生えなくなったらしく、細い眉をアイブローで書いている。こんな奴がスキンヘッドにしたら・・・おかしくて仕方がない。

「矢崎は汗かかんなー、髪長いのに」

そういえば、けーは俺の事を名字で呼ぶ。俺の名前は矢崎信也だが、名字で呼ぶのは高校仲間の中でけーだけだった。他の仲間からは、シンヤとかシンちゃんと呼ばれていた。髪型はけーの言うとおり長い。昔から髪型は変えない主義で、前髪が頬ぐらいまであり、サイドは後頭部にいくにつれて短くなっている。中学生の頃は前髪もサイドも同じ長さのロングヘアーだったが、髪が耳にかかるとくすぐったいので耳は出る様にカットしている。染める事には全く興味がなく、綺麗な黒色だ。

矢崎「まだ7月やからな、8月なったら汗だくや」

圭祐「7月も8月も温度変わらんって絶対」

矢崎「いや、変わるちゅうねん。もの凄く。ほら見て見て。なっ。変わったやろ?」

圭祐「何がやねん!何を見たらええねん?」

矢崎「この鼻の頂点あたり」俺はけーが目線を俺の鼻に向けたと同時に鼻を膨らました。

「ハハハ!汗関係ないやん!」けーが高い声を響かせ笑う。

こういう馬鹿なやりとりが好きでけーとは仲良くなったと言っても良いぐらいだ。このやりとりが1段落ついたところで、2人納得したかの様に、待ち合わせの場所から歩きはじめた。

 

さすがに日曜日の大阪難波は人が多い。人ごみの声と車のクラクション、それに時々近くで聞こえる飲食店のキャッチの声。

「矢崎、ツイッターやってる?」けーが、周りの音に負けないよう声を張って言った。

矢崎「やってへんよ。何か呟くやつやろ?邪魔くさいやん、そんなん」

圭祐「おもろいで。ツイッター。矢崎も呟こうや」

矢崎「人間、ほんまに呟く時は口から呟くねん。文字にいちいちせぇへんわ」

圭祐「そんな屁理屈言うなやー。最近、ツイッターで相手探してタイマン張るんが流行ってんねんで」

矢崎「へー。高校生ら?俺らが高校生の時と変わったなー」

圭祐「いや、高校生だけじゃないねん。年齢制限なくやってるみたいやで。そういう事してる奴を片っ端からフォローしてんねんけど、ほら、俺らが入学した時はもう卒業してたけど何でか入学式の日に正門におった原口って奴」

矢崎「ああ、8市を制覇したって奴?」

俺は、大阪柏原市にある、柏原西高等学校に通っていた。柏原市の高校で俺の高校は1番喧嘩が強く、俺はこの学校でトップで、他市の1番喧嘩が強い高

校のトップとタイマン、もしくは団体戦で勝てば2市制覇となる。ちなみに俺は柏原市、八尾市(この八尾市は地元で、柏原市の隣にあり、俺はここから柏原西に通っていた。地元八尾市は中学生の時から制覇していて、八尾市で№1の高校、八尾北高校に中学時代の仲間、小東英毅が入学しトップになった為、自動で制覇という事になり、藤井寺市、羽曳野市、富田林市、松原市の計6市を制覇した。(原口というOBはこの他に河内長野市、東大阪市も制覇したとされる)

圭祐「最近、その原口、寝屋川市の奴とやって負けたんやで」

矢崎「まじで?何処でやってん?ちゅうか何で知ってんねん?」

圭祐「場所はポリの事もあるし、ダイレクトメッセージでやりとりしてるみたいで解らんねんけど、勝ったら、倒れてる相手の画像をUPしよんねん。」

矢崎「なんやようわからんけど、とりあえず南河内(藤井寺市、羽曳野市、富田林市、松原市、河内長野市)と中河内(東大阪市、八尾市、柏原市)を占めた伝説の男は北河内(寝屋川市)に負けたんやな」

「画像みたけどボコボコや。ほら、見てみ」

「そんなん見たないって」

本当に、男がズタボロな画像なんて見たく無かったのだが、けーが、画面を俺の顔の前に近付けてくるので、目に入ってしまった。

確かにボコボコだ。俺の高校入学式の時、正門で強いとされる新入生を殴りまわしていた時以来に見た。俺は髪が黒く、目立たなかったからか、普通に正門を抜けた記憶がある。わざわざ「八尾市の中学でトップでした」と説明して喧嘩するのも邪魔くさかったからだ。けーは東大阪から通学していて、トップではなかったが坊主で金髪と言う事で原口にやられ、2発で立てなくなったらしい。そんな男が、確かに倒れている。それを確認した後、その男をバックに自撮りしている短髪で茶髪の男の目に俺の目は離れられなくなった。そして知らない間に俺は右の拳を握っていた。

矢崎「こいつ幾つ?」

圭祐「プロフィールでは19歳ってなってる。俺らのタメや。もしかしてやる気出てもうた?」

矢崎「コイツは怪我そんなにしてへんな。マジでタイマンか?」

圭祐「確かめてみる?」

矢崎「・・・・あほかっ。社会人なってまで喧嘩してられるか!」

圭祐「そう。って言いながら、ツイッターのアプリのやり方とか聞いてこやんといてな」

「言わんわ!」