私の故郷は北海道です。
実に寒さの厳しいところです。

そんな北海道で育った私には
忘れられない思い出があります。


もうすぐ初雪が降るかと思われる秋のころ
学校から帰ろうとすると、
昼間なのに空はどんよりと暗く
吹きつける風は凍えるように冷たいものでした。

子供心に
何かしら恐ろしいものを感じ、
早く家に帰りたいと
そればかりを思って急ぎ足で歩いてました。

時折

ゴーーーーッ!!

というおどろおどろしい音をたてて風は吹き、
周りには誰もいません。
田舎の道を一人で歩いていると
いろんな恐ろしい妄想が浮かんできます。


蛇女ゴーゴンが現われるんじゃないかとか
怖い物の怪が出てくるんじゃないかとか


寒いし怖いし
もう、涙目で急いでました。


やっと家につき
玄関のドアを開けた時
家の暖かさとともに
プ~ンとシチューの香り。

ゴーゴンも物の怪も
皆どこかに消え去りました。


「おかえり~」

という母の声。



本当に心からホっとして
「ただいま~」と言って母の元に駆けて行きました。


その母も今は亡く
もうじき母の亡くなった年齢に追いつこうとしています。


ねぇ、お母さん
私はあなたのように
あったかい家を作ることができたかな?
娘たちは
ここを安らぎの場所と思って帰ってきてくれてるのかな?
そんな事を思う今日この頃です。



スープストックトーキョー