うちの長男、ビデオゲーム・デザインの大学院で、デジタルアートの講師をしているんですけどね。
その大学院には、世界中から生徒さんが来ているんです。
ひとり、シャイで性格のいい中国人の生徒さんがいて、特に息子のことを慕ってくれていて、
ちょくちょくオフィスに、お喋りに顔を出すんだそうです。
息子はまだ24歳ですから年も近く、同じくアジア人ですし、
故郷から遠いアメリカで、ホームシックを感じる中、
息子のことを、よくしてくれる友、という感覚が、彼にはあるのかも知れません。
息子、ゲーム会社への仕事に専念するため、来年の一月いっぱいで講師を辞めるんです。
そのことが生徒さん達に連絡されて以来、その中国人の彼、息子のところへ来なくなっただそうです。
心を閉じている様子なんだそうです、
彼は、息子との別れが怖く、今から距離を置き、苦しまなくて済むように準備しているのでしょう。
彼は、別れの日に込み上げて来るだろう、哀しみの痛みが怖いのでしょう。
別れに臆病者の私には、手に取るようにわかるんです。
うちに6年居るピー。
鳥は15年くらい生きるそうですが、
可愛らしく、私の頬にくっ付き、キスをしてくる時、ピーに何かある日のことを想像し、
今から、飼い始めたことを後悔することがあります。
こんな私は、もし、主人に何かあれば、
主人と出会ってしまい、心を開き、心を許し、永い年月を共に過ごし、思い出を作り、
これほど掛替えのない存在の人にしてしまったこと、後悔するのかも知れません。
息子は、「どうして先のことを考えるの? 今を思い切りエンジョイするべきだ。」 と言います。
頭の中ではわかっているんです。 でも...
私同様、別れが怖く臆病者のその中国人の生徒さん、
過去に大切な人との別れに、苦しんだことがあるのかも。
会ったことはなく、顔も名前も知らないんですが、なんだかずっと、彼のことが気になって。