実は、私、横着たれな母親だったんです。
息子達が乳児の時、哺乳ビンは洗剤と湯でしゃかしゃかしゃかと濯ぐだけ、お風呂は一週間に二回くらいのもの、
オシャブリが道に落ちても、自分のTシャツの裾で拭いて、息子の口に押し込んでました。
なにかにつけて、「原始人の時代でも、子供はちゃんと育ったんだから...」。
私、大学で微生物学の授業をとり、コワイコワイ病源菌についても学んだのに、これですから。
可哀相な息子達、しょっちゅう病気になって、病院に駆け込んでいた... なことは全くなく、
二人ともウルトラの父級な健康優良児で、次男なんて、初めての病気は15歳の時、それも薬なしで二日で完治。
今18歳ですが、生まれてこのかた、風邪を引いたことが一度もありません。
赤ちゃんの時も、一度も熱を出したことがなく、下痢もしたことなく、吐いたこともなく、
ちょっと心配になって、ドクターに相談したくらいです。
横着たれである以外に、
菌に接するほど免疫がつくし、神経質な母親をして子供達も神経質にしたくなかったという理由があったんですが、
80近くの大学や研究所がコラボレイトした、170億円の五年間の研究 (Human Microbiome Project) の結果によると、
私がしたこと... と言うか、しなかったことが、子供達には良かったようです。
サイエンス・ニュースのサイトにある数々のレポートをまとめると、
人間の体の中、表面には、人間の細胞より10倍の数であり、一万以上の種類の微生物が共存し、
かき集めると脳くらいの大きさになり、体重の1%から3%は、細菌なのど微生物の重さだそうです。
(50キロの人だと、500グラムから1.5キロが菌の重さ。)
人間を病気にしてしまう多数の種類の細菌も、その中に含まれているんですが、
健康な人に住むそういう細菌たちは、害にはならず、おとなしくしてるんだそうです。
他の微生物も、ただ居座ってるのでは全くなく、大切な役目をしてて、
腸内の細菌なしで、人間は臓器だけでは食物を完全には消化できないし、ビタミンに変化することもできないし、
蚊を追っ払う成分を分泌する細菌が、皮膚にはくっついているし、
人間は細菌なしでは生きていけず、細菌に守ってもらっているんです。
必要な微生物が揃わないと、当然、体の調子が狂うわけで、
肥満、ぜん息、アレルギー、ガン、うつ病、ADHDすら、細菌が欠けることが原因である可能性があると言われ、
自閉症の人達は腸の細菌の種類が少ないので、細菌と関連があるのではないかと見られているんだそうです。
今は、抵抗物質の使い過ぎで、必要な細菌も殺してしまっているし、
帝王切開やパウダーミルクの使用で、赤ちゃんがお母さんの菌を受け取る機会を逃すケースが多いし、
除菌ソープやスプレーのせいで、菌と接触することができないし、
細菌の種類が欠けている人が増えているんだそうです。
あるリサーチでは、家の中で犬が飼われていた家庭で育った子供達は、中耳炎などの病気になる可能性が低く、
外に出入りする犬だと、さらに可能性が低いそうです。
犬がいろんな菌を運んで来てくれるからでしょう。
汚い話ですが、
微生物の揃った健康な人の便の液状を、肛門から注入する治療法も試みられ、効果をあげているんだそうです。
ちなみに、プロビオティックなヨーグルト内の細菌は種類が限られているので、それほどの効果はないそうです。
私が知る限りでも、キレイ好き過ぎの母親の子供達は、病弱な子が多いです。
コロンビア人の友達は、子供達のおもちゃを一日に数回、メイドさんに消毒させていたそうですが、
成長した子供三人、しょっちゅう病気してます。
義兄のフランス人の奥さん、一人目は毎日、夏は日に二度もお風呂に入れ、哺乳ビンは沸騰するお湯の中で殺菌し、
随分張り切ってましたが、二人目、三人目は忙しくて、かなりの手抜き。
いつも病気にかかっているのは一人目で、三人目なんて鉄人のような子です。
日本では抗菌グッツが流行っているようですが、このニュースは届いてないのでしょうかね。
私が子供の頃は、アレルギーの子なんていませんでしたから、クラス全員、給食を全て残さず食べるのが決まりでしたし、
自閉症もうつ病もまれで、ADHDなんて聞いたこともありませんでした。
今、日本も増えているようですね。
原始人の時代には、こんなにもたくさんの人がなる、こんなにもたくさんの病気、存在しなかったかも。
ところで、体の細菌を全て処分したら体重が一キロ以上減るんだ、なんて考えたのは私だけ?