【書評】財務諸表を読む技術わかる技術 小宮一慶 朝日新書 | 中小企業診断士グループ“YTD”のブログ

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しんしんです。

著者のフリーキャッシュフローに関する定義が興味深い。フリーキャッシュフローには2つの定義があると言う。1つは、一般的に使われる「フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフローー投資キャッシュ・フロー」である。もう1つは、「フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフローー現事業維持のために必要なキャッシュフロー」という定義である。現事業維持のために必要なキャッシュ・フローについて具体的に有価証券報告書で触れられているわけではないが、減価償却費を指す。

日経新聞などで見られるフリーキャッシュフローは前者が使われるが、専門家の間では後者が使われるという。理由として、まず3ヶ月を越えるファイナンス(定期預金の解約等)はキャッシュフロー計算書では「投資有価証券の取得/売却による支出/収入」の中に入るが、このようなキャッシュは本来「使えるもの」と見なすからである。
確かにフリーキャッシュフローから定期預金を解約して入ってきた現金が差し引かれるのは、「本来自由に使えるキャッシュであるべきフリーキャッシュフロー」という思想からすれば不合理である。

投資キャッシュフローの項目のうち、注目すべき項目は「(有形)固定資産の取得による支出」である。「(有形)固定資産の取得による支出」はほとんど設備投資であるが、この項目が減価償却費よりも多いか否かが、その「会社の強さ」を判断する基準になるのである。普通は減価償却費分くらいの新たな投資をしなければ現事業の維持が難しくなるからだ。

具体的な財務諸表で見てみよう。シャープの平成22年度の「減価償却費」が272,081百万円であるに対し、「有形固定資産の取得による支出」は195,4041百万円に過ぎない。平成23年度では、「減価償却費」248,425百万円に対し、「有形固定資産の取得による支出」は118,168百万円である。「減価償却費」が「有形固定資産の取得による支出」を大きく上回っているのが見て取れる。

せっかくなので「財務活動によるキャッシュフロー」にも触れておく。すでにフリーキャッシュフローが大幅なマイナスであるため、「財務活動によるキャッシュフロー」で資金調達をしなければならないが、「短期借入金」が平成22年度では32,687百万円から平成23年度は93,634百万円へ膨れ上がっているに対し、「長期借入金」は平成22年度では、80,566百万円から8,833百万円に激減している。シャープに対し銀行が1年以上の期間ではもう融資しなくなっているのである。

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