〜亡き恩師  野島稔氏に捧ぐ〜

2023年1月19日(木) 18:30 開演

よこすか芸術劇場

 

J.P.デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 ニ長調 K.573

モーツァルト

 

ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調  K.311

モーツァルト

 

バラード 第2番  ロ短調 S171

リスト

 

〜休憩〜

 

主題と変奏 ニ短調  Op.18b

ブラームス

 

3つのロマンス Op. 21 

C. シューマン

 

ピアノソナタ 第2番  ト短調  Op.22 

R.シューマン

 

アフタートーク  〜野島 稔先生を偲んで〜

聴き手: 梅津時比古

 

曲に関したお話や、演奏家のことについてのプレトーク というものはありますが、緊張した演奏が終わってのお話というものも、ちょっと面白かったです。

演奏者は緊張がほぐれて、しかも気持ちが高揚していますから、いろんなお話が出てくるのですね。しかも色々な面について素直に返答していただけて、この藤田さんをちょっと見直した感じです。

野島先生という方もユニークな方だったのですね。残念ながら野島先生の演奏を聴いたことがないのです。とても残念な気持ちです。

何年か前から、横須賀ピアノコンクールというものが催されたいるのは知っていましたが、優勝 入賞者のコンサートにも行ったことがないのです。

この委員長でいらっしゃった野島先生がお亡くなりになったのは、このコンクールの予選会などの途中ではなかったかと思います。

 

今、目の前で聴いたこの若いピアニストに「大きな影響を与え、ユニークな個性を育てたのだなあ」としみじみ思うことができました。

そういったご縁で、その野島先生が生まれ育ったこの横須賀の地でリサイタルを開こうと思われたようです。

それになんと来週、カーネギーホールで藤田さんがリサイタルをなさるそうで、その時と同じプログラムで、野島先生との縁が深いこの横須賀でリサイタルをする運びになったようです。

この計画は急遽決まったのかなあというタイミングで、よこすか芸術劇場からのお知らせがきたのでびっくりいたしました。

現在かなりな人気を誇るこの若手ピアニストが、このタイミングでなぜ横須賀でリサイタルを?

と思いました。

野島先生との最後の電話のやりとりが、「コンチェルトではなくリサイタルが聴きたいなあ」というものであったとのこと………

もちろんカーネギーホールでもリサイタルなわけですが、その直前に横須賀でリサイタルを開くということに何か強い意志のようなものを感じました。

 

平日ど真ん中の木曜日、しかも首都圏から離れたこの地で開くということの裏にはそんな意味が隠されていたのですね。

5階まである会場はさすがに上の階までぎっしりというわけではありませんでしたが、1、2階は満席でした。

 

いろいろ私もこのチケットを購入するときには、こんな日程で伺うとは思っていませんでした。

しかも午前中に東京にレッスンに行き一度帰ってから、こちらにきましたので、さすがに疲れておりました。心配したように1部のモーツァルトは全部聴き取るにはちょっと身体がついていけませんでした。

それが2部でブラームスが始まった途端に感性が目覚めたと申しますか、その後のシューマンとともにびっくりするほど自分の中に音楽が入ってくることがわかりました。

このブラームスの曲のメロディーは、何か映画かドラマかで使われていて、繰り返し繰り返し畳み掛けるように出てきていた記憶があります。この曲ってピアノ曲だったっけ?と思いましたら、弦楽六重奏曲第1番の第2楽章として書かれたものだったのですね。

それを作曲者自身が次の年1860夏頃にピアノ用に編曲しクララ・シューマンに贈ったとのこと。

うーん。その後クララの曲、ロベルトの曲と続くわけで、この2部は心が切れることなく聴くことができました。

この2部の冒頭のブラームスで完全に心が目覚めたのです。

(私ってこんなにロマン派の曲が好きだったんだなあと再認識!)

暗くて、寒く、雨まで降ってきた夜でしたが帰り道は、アフタートークで語られていた内容も面白く、興味深く、音楽の演奏とともに心に残りました。

飄々とした風貌ですが、きっと来週のカーネギーホールのお客様も満足されることと思います。