昨日は、METのライブビューイング「 ロベルト デヴェリュー」最終日でした。

ドニゼッティのオペラとは思えませんでした。
ドラマティックな内容の音楽と演技で、いわゆるベルカントのオペラという感じがしませんでした。


先日、オペラ友達からメールがきて、
「見てなかったら必ず見た方が良いし、これほど難しい歌を歌い続け、しかもドラマチックで最後に涙が出たのは初めてです。休む間もないという感じです。」


先週末に見に行けなかったので、最終日になってしまいましたが、行って良かったです。
圧倒された感がありました。

何と言ってもエリザベッタです。
ソンドラ・ラドヴァノフスキーです。
もちろんあんなに難しい歌を歌いながら、演技をするという人間離れした離れ業をやってのけることで、もうなんとも言えないのですが、その存在感が凄い!
もう、エリザベッタそのものに見えてしまうのです。

杖をつき、少し震えながらでも強固な意志を貫き通し、愛した人の命を身悶えするような気持ちで救いたい、復讐したいという相反する気持ちで自分が引き裂かれるように感じている。
老醜に落ちて生きながら、なお、愛しい気持ちを滲ませて苦しむ姿が凄いというしかないほどの迫力でした。
あの時代ですから、今の時代の69歳とは比べるものがないほど、老齢だったのだと思います。

幕間インタビューの1番最初で、デボラ・ボイトと並んだ途端、今を生きる人になったのにびっくりしました。顔までふっくらと見えたのには驚きました。


この歌手にこの演出という具合で、
演出も素晴らしかったです。
大仰でなく、でもひとつの場所が( 舞台 ) が様々な場所になり、それを貴族の衣装をきた観客でもあり、出演者でもある 人たちが囲んでいる。

最後の最後でも出演者は左右の観客に挨拶をする。同時代の観客に。
それからおもむろに正面の現代の観客に挨拶をする。

同時代人でありながら、その出来事を客観的に見ている存在。
何かそれがとてもユニークに感じました。
演出家に、この時代の雰囲気の魔法にはめられてしまったように思いました。
それぞれの、衣裳が素晴らしく、絵から抜け出したような群衆で、それが薄暗いシャンデリアの灯った室内の装飾と一緒になって、この時代を感じさせます。
衣裳と人がつまり大道具でもあったように思います。動く大道具。

MET の舞台転換の場面が好きで、出来るだけ休憩中も画面を見ているのですが、今回ほど動きがなく、あまり人もおらず、静かな舞台裏は初めてのような気がしました。