天注定(A Touch Of Sin)
2013年 中国・日本映画
【監督】ジャ・ジャンクー
【出演】チャオ・タオ
チァン・ウー
ワン・バオチャン
ルオ・ランシャン
【ストーリー】
公共の炭鉱を私物化する人々に憤る男。妻と子には「出稼ぎ」だと偽って各地を渡り歩きながら犯罪を繰り返
す男。顧客からいわれのない侮辱を受けるサウナの受付係の女。単調な工場労働に飽き、歓楽街に身を投じ同
い年のダンサーと恋に落ちる青年。中国が直面する様々な問題を内包した4つの物語は微妙に連携し、時には
暴力的な手段に訴えざるをえない中国の庶民の現状を浮き彫りにする。(東京フィルメックス作品解説より)
【コメント】
昨日から有楽町朝日ホールで始まった東京フィルメックス。
実は初めての参戦です。
オープニング作品「罪の手ざわり」の前に開会式がありました。
そしてその最後にフィルメックスのプログラム・ディレクターでもありこの映画のプロデューサーでもある市山尚
三氏のあいさつと監督ジャ・ジャンクーのビデオメッセージが流れました。実は市山尚三氏うちのダンナの高校
の同級生ってことで気になっていたのです。いやー、同じ学校出てもこんなに人生違うものなのね^^;
映画は今年のカンヌ映画祭脚本賞を受賞したということで期待。ただ監督がビデオメッセージでも言ってました
が暴力を描くことによって暴力というものがなくなってほしいというほどの激しい暴力でした。
実際に中国で起こった4件の事件が基になっているということで現在の中国のひずみがよく分かりました。中国
の富裕層ではない人たちの生きるための必死のもがきとか耐えるサマとかなんか見てる方も辛くなって来まし
た。東京国際映画祭で観た「今日から明日へ」でもそうでしたが若者たちが生きていくために職を求めてさまよう
というか若者たちや弱者の住みにくい国なのかなあと思わずにはいられなかったです。
監督がその暴力は昔からある任侠に通じるのではと言ってた通り、サウナ受付係の女性はお金ならいくらでも
あるんだからお前は言う事を聞けばいいんだとお札で殴られまくり、怒った彼女は持っていたナイフで切りつけま
す。それがめちゃくちゃ功夫っぽくってかっこよかったんです。
出稼ぎだと言って拳銃で犯罪を繰り返しそのお金を送金する男がちょっと怖かったです。人を殺すことを何とも
思ってなくって自分の生活費を稼ぐための獲物としか思ってないような。感情も何もない感じで、ほんと怖い。そ
れに中国広いから逃げ道いくらでもあるし。人も多いしなあ。
どのエピソードもそれぞれとても面白くて次のエピソードに続く人とバトンタッチみたいになってたりして進むの
も上手いな~と思いました。
どれもみんななんでそんなに暴力ふるうんだろうって思うくらいひどくって不思議。お金持ちとか権力者はさら
に暴力で力をふりかざさないと満足できないのでしょうか。ダンサーと恋に落ちた青年の物語がちょっと悲しかっ
たです。田舎の親への仕送りのための生活。あの社会で生き抜くためには繊細な心の持ち主はどうにもできな
いのでしょうか。
つくづく理不尽な暴力と弱者が犯罪者となる世の中でなくなることを願うばかりです。
来年にはBunkamuraル・シネマ等で上映されるようですが、血がダメな人は無理と思われます…。