なぜ、あの“決定的瞬間”は怖いのか?――本当の犯人は、あなたの無自覚な「お笑い芸人」だった
プレゼンの開始直前、試合の結果を左右する一瞬、あるいは重要な決断を迫られる瞬間。私たちは人生で幾度となく、息が詰まるような「刹那」に直面します。そのとき、心臓を締め付けるようなプレッシャーや恐怖を感じることは、誰にでもある経験でしょう。
しかし、もしその恐怖が、その瞬間そのものから来ているのではないとしたら?もし、まったく別のところ――私たちの「内なる立ち位置」に原因があるとしたら、どうでしょうか。
この記事では、こうした強烈な瞬間にまつわる恐怖の正体を解き明かす、3つの驚くべきインサイトをご紹介します。
1. 「決定的瞬間」には、まったく異なる二つの顔がある
まず理解すべきは、どんな「刹那」にも、その根底に中立で不変の構造があるということです。その構造は、一筆書きで描ける「五芒星」に似ています。それは切断点ではなく、連続した流れの中の「折り返し点」なのです。
そして、この同じ構造を見ているにもかかわらず、私たちの認識には二つのまったく異なる顔、二つの位相が存在します。
一つは**「存在的刹那」です。これは、五芒星の一筆書きの線そのものを感性(kansei)**で捉える見方です。始点も終点もなく、ただ流れ、通過し、揺れ動く運動そのものとして体験します。そこには「私が体験する」という中心的な主語が存在しないため、コントロールすべき対象もなく、恐怖は発生しません。ただ、気づいたら通過している世界の「折り返し点」です。
もう一つは**「人間的刹那」です。これは、五芒星が描き出す外側の五角形という「形」を思形(shikei)**で捉える見方です。流れる運動を静止させ、境界線で区切られたものとして認識します。ここに自我、つまり「私」が主役として登場し、「この一瞬が私の価値を決める」「失敗したら終わりだ」という生存テストが始まります。恐怖、プレッシャー、失敗の可能性はすべて、この静的な見方から生まれるのです。
この区別が極めて強力なのは、問題の焦点を「外部の出来事」から「自分の内的な構え」へと完全にシフトさせてくれるからです。
2. 「怖さ」の発生源は、瞬間ではなく「自我の配置ミス」だった
この記事の核心は、非常にシンプルな結論にあります。恐怖は、ある瞬間を「私が体験する出来事」としてフレーム化した瞬間に生まれるのです。
これは、先ほどの五芒星のメタファーで言うところの「自我の配置ミス」です。連続した流れ(感性)としてただ通過する代わりに、静止した五角形(思形)を認識し、その角の一つに「私」という自我を配置してしまう。その瞬間、単なる世界の転換点だったはずの中立的な瞬間が、個人的な評価やプレッシャー、そして失敗の源へと変貌します。
ソーステキストにある、この本質を突いた言葉を見てみましょう。
怖さは刹那にない。 自我を置いた場所にある。
この洞察は、私たちを「怖い瞬間を乗り越えよう」という不毛な戦いから解放してくれます。代わりに、「今、自分は流れの中にいるか、それとも角に立っているか?」と、ただ内的な配置を確認することへと導いてくれるのです。
3. あなたの深刻な自我の正体は、無自覚な「お笑い芸人」だった
では、私たちを静的な五角形の角に立たせ、恐怖を生み出す「自我」とは一体何なのでしょうか。ここで、最も意外で強力な概念が登場します。それは、自我を「気づかれていないコント」として捉える視点です。
物事を必死にコントロールしようとしたり、自分の正しさに固執したり、状況を過剰に深刻に捉えたりして、静的な世界観(思形)にしがみつく自我。この状態を、ソーステキストでは親しみを込めて**「志村」**と呼びます。それは、本人は至って真面目なのに、客観的に見ると滑稽な状況を生み出している無自覚な芸人のようなものです。
自我の定義は、まさにこの点を表しています。
自我とは、気づかれていないコントである
驚くべきことに、この状況から抜け出すための解決策は、自我と戦ったり、消し去ろうとしたりすることではありません。必要なのはたった一つ、「あ、志村だった🤣」と、そのコントに気づくことだけです。
このシンプルな気づきの一言が、あなたを瞬時に物語の主役から、一段高いメタな視点を持つ観客へと引き上げます。その瞬間、深刻さの中心にいた自我は単なる舞台の小道具へと変わり、それに付随していた恐怖やプレッシャーは自然と消え去るのです。
おわりに
今回ご紹介した洞察をまとめます。
- 「決定的瞬間」の構造は中立な五芒星。それを流れ(感性)で捉えるか、形(思形)で捉えるかで、体験が「存在的」にも「人間的」にもなる。
- 恐怖の源は瞬間ではなく、自我を静的な形の上に配置してしまう「配置ミス」である。
- その配置ミスを犯す深刻な自我の正体は「気づかれていないコント(志村)」であり、それに「気づく」だけで状況は変わる。
恐怖は打ち負かすべき敵ではなく、自分の内的な視点について教えてくれるシグナルです。解決策は、瞬間を変えることではなく、それとの関係性に気づくことの中にあります。
次に強烈なプレッシャーを感じたとき、心の中でそっと呟いてみたら何が起きるでしょうか。
「あ、志村だった🤣」と。