Our Colorful Days Go On...

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中2の「解の公式」から数学のすべてを見失ったド文系人間が、日常にあふれる色彩の楽しいお話をおりまぜながら、印刷・プリントのカラーマネジメントの話題をお届けします。

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標準化のための規格化

ここからはJapac Colorがどのように色を定義し、実装ているのかを見ていきます。

 

標準化を行うために、製品の規格を取り決める必要があります。規格とは、製品の寸法や形状、材質などの標準を決め、「取り決め」を文章化したもので、その「取り決め」は間違いなく判定するために、数値化されていることが望まれます。

 

例えば、用紙サイズの規格はA3やA4など縦横の長さが数値定義されており、製品の仕様が規格値によって明確化されています。

その規格値は、定義可能な箇所を測定して得られる値を採用することが必要です。用紙サイズの規格を例にとるなら、A4のサイズは、外辺の短辺が210mmで長辺が297mmであると、サイズとともに計測箇所を定義することが出来ます。

 

印刷とうい工程の特殊性

しかし、印刷の色再現では、同様に測定箇所の定義をしようすると、問題が発生します。

 

前述したとおり、印刷すべての製品がオーダーメードでありすべて同じ絵柄が入っているわけではなく、仕上がった製品のある特定の箇所を指定することが出来ません。

 

つまり、製品上で規格値を設定して、計測して管理することが出来ないと言うことです。

 

空の色は○○葉っぱの色は××といった具体に色を規格化したくとも、それぞれの色は時間や、光の当たり方や、そもそも絵柄にそれらが登場しなければ計測することが出来ません。


印刷色再現の規格化/Japan Color規格値

そこで、印刷の色管理では、仕上がった製品の絵柄ではなく製造プロセスに注目し、色再現をに影響を与える材料であったり機械設定を規格値として定義して管理することとなりました。

その規定値としてあげられたのが、材料である①インキ②用紙、製版・印刷機械設定の結果である③ベタ色濃度④ベタ色彩値⑤50%ドットゲインになります。材料と機械設定が規定内なら、その仕上がりも同じく製品仕上がり規格内であるという考えから成り立っており、この手法はISO12647-2を踏襲したものとなります。

それぞれの要素をご説明していきたいと思います。

①インキ

印刷において色材そのものであるため、色再現に大きな影響を与えます。国内主要メーカーの平均的な分光反射率曲線を求め、それを元にJapan Color Ink SF-90が印刷インキ工業会で作成され、ISOに提言されました。

 

このインキは現在は製造されていませんが、各社よりJapan Color対応インキが発売されており、それらのインキを使用することが条件の1つとなっている。

 

Japan Color 認証制度 標準印刷認証 オペレーションガイド

一般社団法人日本印刷産業機械工業会著

P36/図表7-9 Japan Color対応インキ一覧参照


②用紙

用紙の白色度や光沢などが、色再現に影響します。こちらも日本で製造されていた主要な用紙を計測し、平均的な用紙を求めJapan Color標準用紙としてISOに提言されました。

 

それを元に各社からJapan Color対応の用紙が発売され、その使用がJapan Color規定の一つとなっています。

 

Japan Color 認証制度 標準印刷認証 オペレーションガイド

一般社団法人日本印刷産業機械工業会著

P35/図表7-8 Japan Color対応コート紙一覧参照


③ベタ色濃度

インキ供給量調整によりインキ皮膜の高さが変化します。それにより、光の反射率も変化して色相も変化します。インキ皮膜は光の反射率:濃度によって管理することが出来ます。

インキ皮膜の高さにより光の反射量が変化し、その反射率である濃度を管理する。

出展:ハイデルベルグジャパン様ホームページより

 

 

実際の印刷時には、コントロールストリップという各インキ100%を含むパッチを印刷物の余白に配置し、濃度計測しながら、インキの供給量調整しインキ皮膜をコントロールします。

印刷刷りだし時にコントロールストリップにあるパッチを計測して濃度を調整する。

出展:KOMORI-Kare様ホームページより

 

 

④ベタ色彩値

ベタ色は濃度だけではなく、その調整結果としてLabの色彩値もJapan Colorの規定値となっています。

 

K:L*16 a*1 b*2
C:L*53 a*-36 b*-52
M:L*46 a*76 b*-3
Y:L*89 a*-6 b*94

各色許容値:ΔE5以内

⑤50%ドットゲイン

実際のデータより、網点が太って印刷される現象のことをドットゲインといいます。これはインキが紙に転写される際の印圧より、網点が押しつぶされることにより発生し、例えば50%編み部分の光の反射率が60%になったり65%になったりします。

 

これはインキを転写するブラケットの硬やさ、インキや水の温度など、様々な要素により太り方の度合いは変化し色再現にも影響を与えるため、こちらも管理する必要があります。

 

機械設定と併せて、RIPでの網点%のカーブを使ってデータ自体の調整も行います。こちらもコントロールストリップの中に100%ベタと50%のパッチを入れることにより、計測、調整することが出来き、Japan Colorの規定値となっています。

 

 

引用:エックスライト様ホームページより

ここまでJapan Colorの5の規格をご説明してきました。これらの規格値により標準化された印刷の色再現基準が、Japan Colorとなります。

 

これにより日本のオフセット印刷も標準化され、ICCカラーマネジメントの中の1デバイスとして、カラー管理の対象となることが出来ました。

エピローグ

どうでしょうか、Adobe CCに標準搭載される1プロファイルJapan Colorの裏に、これだけの背景や技術的要素があることがご理解いただけたでしょうか。

 

Japan Colorにより印刷の色再現が標準化され、どこの印刷会社に出しても同じ色が出てくるので、価格勝負だけになってしまうと憂鬱に思う方もあるかも知れません。

 

しかし、DXが進むこのご時世で、印刷とうメディアの価値を維持するには、まずは標準化・カラーマネジメントを有効活用し、コントロール可能なメディアにすることが肝要だと思います。

 

価値の前に、まずは使いやすいメディアにしなければいけない、ということですね。その上で、他のメディアにはない、直接五感に訴えるような感性などのような価値を付加するのが、これからの印刷に求められていることでしょうか。

 

以前はメディアを独占していた紙・印刷ですが、さまざまなメディアが台頭した現在、その中でもしっかりと存在感を作って行かなければいけないですね。

 

そのための、手助けとなる、エキゾチックではなく、スタンダートな色再現がJapan Colorとなります。

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エキゾチックとは、異国の情緒・味わいを持つさま、という意味だそうです。「2億4千万の瞳」は、国鉄最後の「エキゾチックジャパンキャンペーン」のテーマソングとして発売されました。当時はバブルの初期で、国内旅行が海外旅行に押されて下火になっていたところ、「日本にもエキゾチックなことろ沢山あるぜ」ということを国鉄がアピールしたキャンペーンだったそうです。

 

最後はどうでも良い話で終わります、今回もお粗末様でした。