連休は東京へ。
夫の誕生日のお祝いをするために。


飛行機に乗ることだけ
何日も前から憂鬱だった。


でも新しい飛行機の設備と
あまり揺れなかったということもあり
結局は全く怖くなかった。
いっぺん死んだお陰かもしれない!!
良い写真が撮れたぞ!と
夫が見せてくれたヒドい一枚(笑)
漫画読んでるだけだからイヤホンは要らないのに
外すのがめんどくさくてそのまんま。


夫はもちろん余裕のよっちゃん。



夫はワイン愛好家。
そんな夫が喜ぶディナーは何だろうと考え
2年前に見つけた隠れ家的レストランを予約。
1日目の夜。

料理に合わせて一皿に一杯
シャンパン→白→白→赤→赤と
五杯のグラスワインがセットになったコース。
しかもとても珍しいワインばかり。


普段はお酒を飲まない私も美味しくいただいた。
少食の我々はハーフサイズのコースを注文。
ハーフがあるってほんとに助かる。
いつもメインが出る頃には満腹だから。


ここのソムリエは
とても丁寧にワインの説明をしてくれる。


どこで採れた葡萄で
どんな気候で育った葡萄か
品種、生産者のこだわり、味わい、
何故この料理にこのワインなのか。


そんなことを噛みもせず淡々と説明し
余計なことを話したりせずに
スッといなくなる。


テーブルに言葉だけを置いていくためか
目線さえ私達に合わせない。
説明自体が料理に含まれる。


けど、こちらが質問をすると
何のためらいもなくスラスラと
独自の見解を丁寧に答えてくれる。


当たり障りのない答えではなく
彼自身の中にある想いを
そのまんま差し出してくれる。


元ホテルマンの私としては
このソムリエのサービスは最高だと思う。


食事が終わると
ソムリエが話しかけてくれた。
ようやく目線を合わせて話してくれた。


島根話から始まり、
最近の東京のスラム化ついて、
今の世の中についてなど(笑)
私達が最後のお客だったお陰で1時間も話した。


私達夫婦は店員さんと話す時間が大好きだ。
どんな人からサービスを受けたのか、
それを知るとよりその時間が味わい深くなるから。


そして素敵な人物との語らいは
自分の中から面白いものを引き出してもらえる。
ワインも料理もサービスも最高で
手作りのバター、パンまで最高に美味しく
大満足の夫。ここにして良かった。


お誕生日おめでとう。
生まれてきてくれて心からありがとう。
本人は20歳になったと言い張るけれど
……42歳おめでとう(笑)


レストランはドゥーアールという
青山にあるレストラン。
私みたいな初心者も肩肘張らず楽しめるし
玄人もきっと感じるものがあると思う。
ぜひお勧めしたい。


丸の内にある「やんも」というお店も
さばの塩焼き定食と刺身が最高に美味しいので
お勧めしたい。
ここは以前、洋服屋の店員さんに教わって以来
上京する度に来ている。
(タイミング悪く休業のときが多いけど笑







朝、出勤のお見送りをするとき
腕時計のベルトが傷んでいるのが
ずっと気になってた私。

銀座三越でベルトの交換をしてもらおうと
夫を強制連行する。
これも新婚時代に一緒に選んだ思い出の品。


そしてプレゼントを探しに
銀座、丸の内を歩き回る。
バーゲンの時期で
素敵なコートがかなり安くなっていた。
が、それでも高いは高い。


が、しかし本命は靴だったので
迷い始める夫。
コートも靴も素晴らし過ぎて
どちらか一つに絞れなくて困る夫。


結局、旅行最終日に空港に向かう時間
ギリギリまで悩んでいた。


もう日が暮れた丸の内界隈の
ベンチに座って夫婦会議を開いた。


最初は私も
「プレゼントは一つだけ」と思っていた。
なんせ一つ一つが私からすると高額だから。


「靴にしたら?」「コートにしなよ」と
夫に揺さぶりをかけて
決断を手伝おうとしたりした。
(カウンセリングかよ


けど私はふと「両方買おう」と言った。
それはもう揺さぶりでは無かった。


どれだけ話し合っても
夫がここまで迷っているのはほんとに珍しい。
それは「どちらも最高に気に入ってる」
という証だった。


「そんなわけにはいかない」
そう遠慮する夫に言った。


どちらか一つにしてしまったら
あなたは「あれも欲しかったな」と思うでしょ。
両方買うことであなたが完全に幸せになれるのなら
買おうよ、と。


だけど、瞳子と旅行に行ったり
そういうことにもお金を使いたいのだ、と
夫はなかなか譲らない。


じゃあその時お金が足りなかったら
借金してでも必ず連れて行ってもらう。
そしてそれくらいのお金を稼ぐ能力は
あなたには余裕であると私は思っている。
まだ今のあなたはMAX値に達してないと思う。


そう言った。


「限界を超えた先に
新しいステージが待っている」


丁度、そんな言葉をネットで拾ってたので
それも夫に見せてみる。


すると、
「よし!」と夫は立ち上がり
急ぎ足で靴屋さんと洋服屋さんを廻った。


夫と私はこれまでの限界値を
共同作業で越えたのだった。






以前の私は
「贅沢は癖になる」と思っていた。


贅沢ばかりしていると
そこから抜けられなくなり
身分不相応な生活をし続けてしまう。
そしてきっと転落していってしまう。


そんな風に思って自制していたのだ。


だから夫が高い靴を買うことを
「なんで靴にそんな大金を使うのだ」と
不思議に思っていた。


それは大富豪が買うべき靴でしょう?
もう少し安い靴を何足も買ったり
他のことに使えばいいのに、と。


でも
仕事から帰ると
丁寧に靴の汚れをブラシで掃除し、
休日には靴屋と間違うほどの道具の山に囲まれて
丁寧に靴を磨いて、
デートで誇らしげにその靴を纏う夫を見てきて
私も徐々に考えが変わってきた。


私が「心」の世界を愛するように
夫も職人が作った靴や鞄などの世界を
心から愛しているのだ。


夫は手に入れたものを心底大切にする。
洋服も同じで、
良いものにはハンガーまでこだわり
肩の綺麗なラインを崩さないように
細心の注意を払い、
運転するときは
コートやジャケットをわざわざ脱いで
シワにならないように後部座席に優しく置く。


そして私に対しても同じだ。
付き合って10年が経つ今でも
私を昔と変わらず大切にしてくれる。
つい先日も肩が凝ったと話す私に
オイルマッサージを丁寧にしてくれた。


私は彼のそういうブレない真摯さを
心から尊敬している。


それは時々頑固さとして見えてきて
私を苛立たせるときもある。
でも私はその頑固さに
何度も何度も救われてきたのだ。
頑固さは彼の美点なのだった。


だからこそ
彼が大切にしたいと思えるものに出会ったなら
妥協せず手に入れてほしいと思うようになった。




両方欲しい。
そう言うことは間違っている。
そう夫は思っていたようで
東京に居た3日間、相当悩んで
消耗していたようだった。
↑多分ケチな私の影響(笑)


プレゼントを買い終えると
エネルギーを取り戻し
「ありがとう」と何度も繰り返し
顔に生気が戻っていた(笑)


こんなに悩んでる夫は
初めて見たかもしれない。
彼は決断力がある人なのだ。


ただ、優しいから私のために悩んでいた。
私が納得するまで待ってくれていたのだ。


どうするか、最後の最後に
ベンチに座って話し合っているとき
私は、この決断が彼の今後を
大きく左右するような気がしてきた。


ならば、「買う」以外の選択肢は無いと
一点の曇りもなくはっきり思えた。


彼の買い物だったけど
これは私自身のことでもあった。


私がこれからの人生
どんな風に生きていきたいのか。
その答えを示さなければならなかった。


目の前で夫に起こっていることは
私自身に起こっていることだと思った。




私も夫と買い物をしてると
すごく悩むことが多い。
夫の顔色を伺ってしまうこともまだ多い。


でもそれは顔色を伺っているというより
夫という鏡に私を映して
自分の本音を探っているのだとこの頃思う。


夫がNOと言ってるように感じるときは
単に私が自分にGOサインが出せてないだけなのだ。


なぜなら、夫はダメとは絶対に言わないと
私は分かっているから。
私が絶対に欲しいと言えば
夫は借金をしてでも手に入れようとする男だ。


だからこそ私は
自分の本音を探し当てなければならない。





そんな夫との買い物を通して
私は自分のほんとに欲しいものを
見分ける能力がどんどん育ってきたと思う。


「夫がNOと言ったから」
という言い訳はもう通用しない。


人生の選択は全て自分に委ねられている。


心底優しい夫だけれど
そういう意味では心底厳しい。


自分で決めろ、と
その優しい笑顔が無言で訴えてくるからだ。


全てを許される、ということの裏には
そんな「厳しさ」が潜んでいる。


自由であるということは
実はとても厳しいことなのだと思う。



プレゼントを買い終えた夫が
この写真をLINEで送ってきた。
とても満足したようだ(笑)


自分を丁寧に扱うってどういうことなのか
夫が目の前でお手本を見せてくれる。


以前、私へのプレゼントを買うため
銀座を歩き回って
煮詰まった夫がふと立ち寄ったカフェに
連れてきてもらった。
コーヒーがとても美味しいカフェだった。


出張のときにたまに立ち寄るバーにも
連れて行ってくれた。
貴腐ワインが好きな私にぴったりの
美味しい白ワインと出会えた!


飛行機の離陸前に流れるビデオが
歌舞伎仕様で面白くて写真を撮ってたら
客室乗務員さんが最後に話しかけてくれた。


そして三パターンあることを教えてくれて
面白い動画をわざわざ流して見せてくれた。


最後まで素敵な人と出会えて最高の旅だった。


「それでいいんだよ」と
祝福されてるかのように
行く店全て素敵なスタッフさんばかりだった。

帰りも全然怖くなかった。


やっぱり、いっぺん死んでみたのが
良かったのだと思う。


ほんとに面白い3日間でした。


さて、今年はどんな年になるのか。
夫や私にどんな変化が起こるのか。


きっと面白いことになるだろうと
予感させてくれる東京でした。
楽しみです。