活発な活動を示す火山島が連なる伊豆諸島。
地震も頻発していますね。
現在8200人余りが暮らす最大の島「伊豆大島」(東京都大島町)で、全島避難を伴う噴火が起きてから今年で27年経ちます。
30~40年間隔で噴火を繰り返す火山の内部ではマグマの蓄積が進み、昨年は近くの海域に活動的な海底火山があることも確認された。
島では次の噴火に備えた対策も進んでいるといいます。
■噴火への備え
山手線の内側の1・5倍に相当する91平方キロの伊豆大島です。
中央には直径3キロのカルデラ(火山中央が落ちくぼんだ地形)があり、その中に火口丘の三原山(標高764メートル)がそびえています。
カルデラ外側の山腹と海に挟まれた元町地区には溶岩流の帯が1986年当時のまま残る。
噴火開始の6日後に山腹が割れ、噴出した溶岩は民家の200メートル手前に迫った。
住民は約1か月間、島外での避難生活を強いられたのはご記憶にある方も多いでしょう。
溶岩にのみこまれた倒木が燃え尽きてできた細穴が見える。
溶岩上にはハチジョウキブシなどの植物も根を伸ばし始めていた。
同規模の噴火は12年と50年にも起きたが、いずれもカルデラ外への溶岩流出はなかったといいます。
50年と86年の噴火を経験した元町在住の大村森美さん(78)は「以前は近くまで溶岩を見に行ったりしていたが、86年に住宅地に溶岩流が迫る経験をしてから、火山に対する印象がすっかり変わった」と振り返る。
伊豆大島では、86年を上回る大規模噴火が平均150年に1回発生しています。
「直近の大規模噴火から230年経過しており、次の大規模噴火はいつ起きてもおかしくない」(千葉大学の津久井雅志教授)。
こうした噴火に備え、東京都は日本初の「溶岩導流堤」を元町の南側の野増地区に整備した。
35億円をかけ、今春完成したコンクリート製の導流堤は延長1キロ。
溶岩流をそらし、地区への直撃を避ける。
気象庁も5年前、役場内に火山防災連絡事務所を設置、観測体制を強化しました。
全地球測位システム(GPS)を使った気象庁の観測では、カルデラ上部の地表面が過去10年で6センチ程度伸びているのが確認されました。
島が少しずつ膨張していることを示すデータで、地下にマグマが供給された結果とみられているのです。
■熱水噴出の穴
伊豆大島は、活発な活動が続く火山島や海底火山が連なる「伊豆・小笠原孤」の北端近くにあります。
その南20キロの海底で昨夏、激しく熱水を噴き出す穴が見つかった。
海洋研究開発機構の谷健一郎研究員が、無人探査機を使って確認した。
場所は「大室海穴」と呼ばれる幅500メートル、長さ1キロ、水深200メートルのくぼみの底。
特殊な温度計で測ると、温度は最高194度に達していたという。
100度を超えたのは水の沸点が水圧が高くなるほど上がるためです。
さらに地下に温度計を差し、深さ50センチまでの地温を10センチごとに測った。
温度変化から推定すると地下約3メートルで100度。
海底下のマグマの存在が推定されたようです。
海穴の一帯は「大室ダシ」と呼ばれる直径20キロ、水深100~150メートルの台地で、火山に特徴的なとんがり地形やカルデラ地形が見られない。
このため、活動的な火山とは考えられていなかったが、音波を利用して地下構造を調べてみると、海底下に大室海穴を中心に、直径8キロのカルデラ地形が埋もれている可能性があることもわかった。
噴火はいつ起きたのか。
伊豆大島の南西部にある高さ20メートル、延長600メートルの地層の大断面には、過去2万年にわたる噴出物がたまっている。
この断面の約1万年前の地層に含まれる軽石と、谷さんが大室海穴周辺で採取した岩石の成分が一致した。
現在、海底の岩石の年代を確定する分析を進めている。
火山について火山噴火予知連絡会は、1万年以内に噴火したものと、現在活発な噴気活動があるものを活火山と定義する。
谷さんは「住民が多い伊豆諸島の近くで、これほど活動的な海底火山が見つかったのは初めて。噴出物による被害だけでなく、海底火山の噴火に伴う津波にも警戒が必要」と話す。