2列・歩かず・手すりつかむ

片側を空けて1列に乗り、急ぐ人がその横を歩く――。

都市部でよく見かけるエスカレーターの乗り方だが、実は危険だという。

 

転倒事故が増えており、混雑の原因になる場合もある。

こうした乗り方を改めるよう呼びかける、商業施設や鉄道会社が相次いでいる。

 


片側を空ける乗り方は、設置台数が増えた1990年代以降に広く定着したとされる。

東京では右側、大阪では左側を空けるのが習慣だ。

 


東京都港区の六本木ヒルズには、地下鉄駅から続く長さ22メートルのエスカレーターがある。

普段から右側を歩いて上る人が多い。


施設を管理する森ビルでは「転倒すればけがをしかねない」と、昨年夏から「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろうキャンペーン』」を実施中。

同社スタッフが期間を決めて乗り口に立ち、呼びかける。

 

立っている時でも、エスカレーターが急停止すれば転倒することがある。

「全員が手すりにつかまって」と同社の秋田朋宏さん。

 


六本木ヒルズは約2万人が働き、1日約10万人が訪れる巨大施設。

まずは社員やテナント従業員の意識を高めようと、エスカレーターが急停止した際の危険性を体験する訓練や、啓発ビデオの上映会も実施している。

 



エスカレーターでの事故は増えている。

日本エレベーター協会の調査によると、1993~94年(2年間)で322件だったが、2008~09年(同)では1200件と4倍近くに増加

「手すりを持たずに転倒する」「隙間に足を挟まれる」「歩いてつまずく」といった事故が多い。

 


エスカレーターは歩くのに不向きな設計だ。


同協会によると、法令で定められたエスカレーターの幅は階段よりも狭く、追い越しざまに体がぶつかりやすい。

またステップ1段1段の寸法は階段よりも大きい。


同協会の広田順一さんは「『立ったまま』が正しい乗り方」と強調する。

 


片側を空ける乗り方は、混雑の原因にもなる。


東京都中央区の三越銀座店では、正面入り口に近いエスカレーターで、1列で乗ろうとする客が、しばしば行列をつくる。

そのため今冬から、各フロアの乗り口に〈2列でご利用ください〉〈歩かないでください〉と呼びかける案内板を設置。


伊勢丹新宿店も、「2列で」と呼びかける音声をエスカレーター周辺で流している。

 


名古屋市営地下鉄は、04年から主要駅で「歩行禁止」の呼びかけを開始。

当初は急ぐ乗客から苦情も寄せられた。

繰り返し理解を呼びかけ、今では全85駅に広げた。


同市交通局の担当者は「かつては、立っていた人が駆け上がってきた人に『じゃまだ』とどなられる例もあった。最近は、歩く人は減ってきた」と話す。

 


JR東日本や東京メトロもここ数年「歩かない、走らない」「手すりにつかまろう」キャンペーンを実施している。

 


ただ、定着した乗り方を改めるのは時間がかかるようだ。



「子どもの危険回避研究所」所長の横矢真理さんは「歩くのが当たり前になってしまっているが、動く乗り物は危険だということを、繰り返し啓発していく必要がある」と話している。


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