1. 国際法秩序・ルール面での影響

困る点(マイナス面)

  • 戦後条約体系の安定性が揺らぐ
    SF条約を「不法・無効」と言い出すと、
    同条約を前提に結ばれた二国間条約・安保条約・領土処理・賠償合意まで「やり直し論」が出かねず、
    国際法秩序の前提が崩れるリスクがあります。

  • 「気に入らない条約は後から無効と言える」前例になりかねない
    いったん合意して運用してきた条約について、
    後から政治的理由で「違法・無効」と主張するのが認められると、
    各国が都合の悪い条約を一方的に否定する口実になり、法的安定性が損なわれます。

一応のメリット・擁護側の論点

  • 「不正義な条約は将来世代が見直すべきだ」という価値観に沿う
    植民地時代の不平等条約や、敗戦国に過度に不利な条約を、
    後世が「是正すべき」と批判すること自体は、国際正義の観点から一定の理屈があります。
    中国はここに乗せて、「戦勝国としての正当な権利」「反植民地主義」をアピールできます。


2. 東アジアの安全保障・軍事バランスへの影響

困る点(マイナス面)

  • 台湾海峡・東シナ海・沖縄周辺の緊張が高まりやすい
    「SF体制は無効」「台湾は完全に中国の内政・領土問題」と強く打ち出すほど、
    ・台湾側の危機感
    ・米日などの同盟強化(抑止強化)
    がエスカレートし、軍拡・偶発衝突リスクが高まります。

  • 既存の安保枠組み(日米安保など)との衝突が深まる
    現実の安全保障はSF体制+日米安保を前提に設計されています。
    そこに「そもそもその前提が無効だ」という主張をぶつけると、
    外交的に折り合いをつける共通土台が薄れ、
    危機の「エスカレーション管理」が難しくなります。

一応のメリット・擁護側の論点

  • 交渉カードとしての価値
    「体制そのものに疑義を突きつける」ことで、
    中国としては米国・日本に対して交渉上のレバレッジ(圧力)を確保できます。
    例えば台湾問題や在日米軍問題で、より有利な条件を引き出す狙いも読み取れます。

  • 抑止の一形態として機能
    強い言葉でSF体制を否定すること自体が、
    「台湾問題で譲歩しない」「長期的に必ず統一を目指す」という意思表示=心理的抑止として働く、
    という見方もできます。


3. 日本・近隣諸国(韓国・台湾など)への影響

困る点(マイナス面)

  • 日本の立場が「常に揺すられる」構図になる
    北方領土・竹島・沖縄・尖閣など、もともと複雑な領土・歴史問題を抱える中で、
    「そもそも戦後処理の出発点(SF条約)が無効だ」という主張が強くなると、
    日本としては外交の土台が常に揺さぶられ、防衛・外交戦略が不安定になりやすい。

  • 韓国・台湾など他の当事者との認識ギャップが拡大
    韓国はSF体制に批判的ですが、法的には「存在する体制」として前提にしつつ修正・補完を志向。
    一方、中国は「そもそも認めない」と主張。
    台湾の地位に関しても、
    ・中国:完全に自国領
    ・台湾:実質的な分離/国家性の主張
    ・日本・米国:最終帰属は明示せず(One China政策の変形)
    と立場がバラバラで、調整が一層難しくなります。

一応のメリット・擁護側の論点

  • 過去の不公正への再注目を促す
    SF体制に埋め込まれた「植民地支配の清算不足」「被害国の声の欠如」に光が当たり、
    韓国・台湾・アジア諸国にとっても、「歴史認識」「補償」「謝罪」などを再議論する契機にはなり得ます。

  • 当事者意識の喚起
    「戦後秩序は本当に公正だったのか?」という問題提起を通じ、
    国際社会(特にアジア)が自らの歴史と向き合うきっかけになる、という評価も理論上は可能です。


4. 国際社会全体の観点

困る点(マイナス面)

  • 「現実に機能している秩序」を否定することで不確実性が増す
    国際社会にとって重要なのは、
    「法的に完璧かどうか」よりも、「ある程度納得でき、かつ安定して機能する秩序」です。
    その基盤である和平条約や戦後体制を根本から否定する主張は、
    他の地域(中東・欧州・アフリカ)の境界線・和平合意にも波及しうる前例になるため、各国は警戒します。

  • 問題解決が“0か100か”になりがち
    「体制全否定」という強い主張は、
    ・部分修正
    ・追加合意
    ・暫定措置
    のような「グラデーション型の妥協」をとりにくくし、
    紛争が長期化・先鋭化する要因になり得ます。

一応のメリット・擁護側の論点

  • 「第二次世界大戦後の秩序すら再検討の対象」という問題提起
    旧秩序に不満を持つ国(グローバルサウスの一部など)にとっては、
    「戦勝国中心の秩序へのアンチテーゼ」として、中国の主張に一定の共感を持つケースもあります。
    そうした国々にとって、中国は「既存覇権の挑戦者」というポジションを獲得しやすくなります。


5. 総括:何が一番「困る」のか

中立的に整理すると、「一番困る」のは次の点です。

  • 条約・戦後秩序の「法的・政治的前提」を根っこから否定するため、
    ①紛争の収まりどころが見えにくくなり、
    ②地域の軍事的緊張と不信感を底上げする

一方で、中国から見れば、

  • 「歴史的正義」「主権の回復」「米国中心秩序への対抗」という
    長期的戦略目標に一貫して沿った主張であり、
    国内統治と対外戦略の両方で使い勝手が良い