故石原都知事とディーゼル排ガス | 救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

普段、僕はETCを使っているので、高速の出口で料金の収受員に会うことはまずない。

たまに、ETCレーンと一般レーンが混在している所があり、そこには収受員さんが頑張ってらっしゃる。

最近は一般レーンも駐車場のゲートの様に、無人化されているところもあるようだ。

自分が使うインター出口の一般レーンが最近無人になったことに気づいただけなのだが。

 

大分前の話になるが、呼吸器科をしていた頃、検診で胸部の異常陰影を指摘された60才過ぎの男性を診察したことがある。両側の肺の上半分くらいに間質性肺炎(慢性)の影が目立った。この方の1年前のレントゲン写真があったのでそれを見ると全く問題なくきれいなものだった。聞けば、1年前に定年退職となり、以後高速道路の料金収受員を始めたとのこと。

 かなり高い確率で、排ガスによる肺障害が想定された。

 たった1年でここまで間質性肺炎が進行するのか?と驚いた。(もちろん、特発性の間質性肺炎では日単位、週単位で悪化死亡するケースはいくらでもある)

 

 というわけで、おそらくは高速道路の料金収受員さんは慢性的に有害な排気ガスに暴露されているし、そのうちの誰かは、この方のように深刻なダメージを肺に受けている。

 昨今のEV化は地球温暖化の対策という側面が大きいようだが、大気汚染にたいする対策としても意味があるのだろう(あまりこのことは強調されない)。

 

 思い出すのは、1999年に当時東京都知事であった 故、石原慎太郎氏が、都庁でトラックのディーゼルエンジンの排ガスから出たカーボンをペットボトルに入れて振り回しながら、東京都からディーゼル車を締め出す、という宣言をしたのを思い出した。結果、東京都が主導した形で、排ガス対策のされていないディーゼル車は車検に通らなくなり、軽油の質も良くなったと聞いている。これを境に東京の大気汚染は著しく改善されたそうだ。

 石原都知事の任期中の功罪は色々書かれているが、都知事権限で国の施策を大きく動かした好例だろう。こういうダイナミックな政治家はとんとお目にかからない。