救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

 最近の勤務医ってドライなのだろうか?

僕は以前の職場では完全主治医制だったので、その病院では患者さんにとっては僕が唯一の主治医であった。なので、その患者さんにまつわるトラブルはまずは僕のところに問い合わせが来る。内科関係のトラブルであれば、呼吸器疾患でなくても自分がまずは受け持ち、どういうトラブル火自分なりに考察し、例えばそれが心疾患であった場合には、改めて循環器科にお願いしていた。

 

 先日、腸の疾患で消化器内科に入院していた患者さんが退院した当日の夜、腹が張ると言って救急外来を受診した。本人は尿閉(膀胱に尿が溜まって尿が出ない状態)だと思って受診したようだったが、実際は、胃袋に食物が溜まったまま、小腸に出ていかない状態で、しかも酷い低ナトリウム血症だった。いずれにしても入院だ。低ナトリウムの原因は何故なのかは判然としなかったが、とにかく補正が必要で、その処置をしながら、胃袋に関してはとりあえず胃管をいれて減圧して、朝もともとの主治医に引き継ぐことにした。

 翌朝、主治医に電話をしたら、その低ナトリウム血症については内科に相談したんですか?と。

 最後の採血は5日前なので、1日で起こったことではなく、5日で起こった出来事だ。それも入院中に。これは内科に紹介はできないでしょう。どんな薬を飲んでいたのか、水分のとり方はどうだったのか、腎臓の機能は? 低ナトリウムの原因を探る方法は教科書に書いてある。これは主治医の仕事でしょう。

 消化器内科、呼吸器内科、循環器内科などなど、内科も大分細分化されているが、若いころは総合的に勉強したはずなのだ。

 まして、前日退院した患者さんが怪我をして再来院したのではなく、内科的疾患で具合悪くなったのであれば、退院の判断が甘かったのではないか?と猛反省すべき案件だ。

 まあ、結局もとの主治医のもとで治療は継続されることになったが。

 

 こんな顛末を妻に話したら、「今は専門性の時代なんだから一人で抱え込んじゃいけないのよ。そういうことをしていたからあなたは途中で専門を変えたくなったんでしょ、と手厳しい」

 そういう考え方もあるのか、と叱られながら、釈然としない気分であった。