高橋が話し終えると高城は深いため息をついた。
無力に倒れた自分を責める。
「………小嶋さんは?」
「大丈夫」
高橋が視線を移したそこには小嶋もベッドに横になっていた。
「にゃんにゃんはずっと前に目が覚めてるから今はただ寝てるだけ」
「よかった…」
高城は小さく微笑んだ。
しかし俯いた表情は曇りがかっていた。
守ると決めたのに、守るために得た力なのに守れなかった。
結果としては最悪の事態は防げたのかもしれない。
しかしそれは前田が現れてくれたからだ。
自分は何もしていない。
後悔と自責の念だけが彼女の心を駆け巡った。
「ちょっとジュース買ってくるね」
高橋は高城の気持ちを察した。
今は一人にしてあげよう。
力が欲しい。仲間を守れる力が。
そう思っていることは痛いほどよくわかった。
自分も同じだから。
各々の想いを胸に扉が閉まった。
「おかえり」
男は小声で言った。
しかし薄暗く閉塞されたその空間には男の声は思いの外響き渡った。
広大で静寂のそこにポツリと置かれた椅子に男は腰かけている。
その姿は不気味に異質な空気を醸し出していた。
「浦野回収完了です」
野呂が静かに言う。
隣には大堀が捕えた大堀と共に並ぶ。
「浦野にはまだ利用価値がある」
男の眼鏡が卑しく光る。
「浦野は牢に入れておきます。ですが…」
「前田か」
「はい…」
野呂が頷く。
男は不敵に微笑む。
「おもしろいじゃないか」
それだけだった。
それだけ呟いて口を閉じた。
大堀は浦野を連れ去っていく。
残った野呂は椅子に深々と腰かける男に言った。
「『遺体』の適合者は必ず捜し出します。すでに刺客は送り込みました」
男は黙ったまま野呂の言葉を聞く。
頷くことも返事をすることもなくただ黙って眼鏡の奥から覗き込む。
「『天国』への扉を開くために…」
野呂は案じるように唱えた。
振り返り立ち去ろうとする。
すると後ろから声を掛けられる。
「野呂」
「………はい」
「任せたぞ」
野呂は無言で背中向けたままでいる。
俯き影のかかった表情は影がかかって見えない。
しかし彼女の気迫が物語っていた。
期待に応えられるように、失望させないようにという決意が。
「任せてください、秋元先生」
その一言はとても力強く、そして揺るがぬ眼光を放っていた。
「よろしくお願いします」
少女は深々と頭を下げた。
テレビロケの為に集められたメンバー。
そこに難波の二人も加わっていた。
「いいよいいよ、そんなにかしこまらなくて」
峯岸が笑みを浮かべて言った。
その隣で板野も微笑みを浮かべる。
「わからないことがあったら何でも言ってね、城ちゃん」
「はい!」
少女はニッコリと微笑んだ。
初のAKBとの仕事だったが先輩たちの優しい心遣いに緊張は解れた。
「なあ?優しい人たちやろ?」
山本が微笑みながら城に話しかける。
「はい!」
天真爛漫なその笑みは太陽よりも眩しく見えた。
「みぃちゃんとともちんみ~っけ」
「手間が省けたね」
どこからか不気味に囁く声。
それは新たな波乱の火種であった。
「のんてぃーに怒られるの嫌だしさっさと終わらせよ、花」
「わかってるわかってる」
狙われるは一期生の二人。
狙いを定めるも一期生の二人。
「ぴーよ、足引っ張んないでよ!」
「そっちこそじゃーん」
「じゃ、行きますか」
二人の気配が消える。
確実に仕留めるその機を狙う為に。
精密に磨がれた毒牙が牙を向く。
「がおー」
.
無力に倒れた自分を責める。
「………小嶋さんは?」
「大丈夫」
高橋が視線を移したそこには小嶋もベッドに横になっていた。
「にゃんにゃんはずっと前に目が覚めてるから今はただ寝てるだけ」
「よかった…」
高城は小さく微笑んだ。
しかし俯いた表情は曇りがかっていた。
守ると決めたのに、守るために得た力なのに守れなかった。
結果としては最悪の事態は防げたのかもしれない。
しかしそれは前田が現れてくれたからだ。
自分は何もしていない。
後悔と自責の念だけが彼女の心を駆け巡った。
「ちょっとジュース買ってくるね」
高橋は高城の気持ちを察した。
今は一人にしてあげよう。
力が欲しい。仲間を守れる力が。
そう思っていることは痛いほどよくわかった。
自分も同じだから。
各々の想いを胸に扉が閉まった。
「おかえり」
男は小声で言った。
しかし薄暗く閉塞されたその空間には男の声は思いの外響き渡った。
広大で静寂のそこにポツリと置かれた椅子に男は腰かけている。
その姿は不気味に異質な空気を醸し出していた。
「浦野回収完了です」
野呂が静かに言う。
隣には大堀が捕えた大堀と共に並ぶ。
「浦野にはまだ利用価値がある」
男の眼鏡が卑しく光る。
「浦野は牢に入れておきます。ですが…」
「前田か」
「はい…」
野呂が頷く。
男は不敵に微笑む。
「おもしろいじゃないか」
それだけだった。
それだけ呟いて口を閉じた。
大堀は浦野を連れ去っていく。
残った野呂は椅子に深々と腰かける男に言った。
「『遺体』の適合者は必ず捜し出します。すでに刺客は送り込みました」
男は黙ったまま野呂の言葉を聞く。
頷くことも返事をすることもなくただ黙って眼鏡の奥から覗き込む。
「『天国』への扉を開くために…」
野呂は案じるように唱えた。
振り返り立ち去ろうとする。
すると後ろから声を掛けられる。
「野呂」
「………はい」
「任せたぞ」
野呂は無言で背中向けたままでいる。
俯き影のかかった表情は影がかかって見えない。
しかし彼女の気迫が物語っていた。
期待に応えられるように、失望させないようにという決意が。
「任せてください、秋元先生」
その一言はとても力強く、そして揺るがぬ眼光を放っていた。
「よろしくお願いします」
少女は深々と頭を下げた。
テレビロケの為に集められたメンバー。
そこに難波の二人も加わっていた。
「いいよいいよ、そんなにかしこまらなくて」
峯岸が笑みを浮かべて言った。
その隣で板野も微笑みを浮かべる。
「わからないことがあったら何でも言ってね、城ちゃん」
「はい!」
少女はニッコリと微笑んだ。
初のAKBとの仕事だったが先輩たちの優しい心遣いに緊張は解れた。
「なあ?優しい人たちやろ?」
山本が微笑みながら城に話しかける。
「はい!」
天真爛漫なその笑みは太陽よりも眩しく見えた。
「みぃちゃんとともちんみ~っけ」
「手間が省けたね」
どこからか不気味に囁く声。
それは新たな波乱の火種であった。
「のんてぃーに怒られるの嫌だしさっさと終わらせよ、花」
「わかってるわかってる」
狙われるは一期生の二人。
狙いを定めるも一期生の二人。
「ぴーよ、足引っ張んないでよ!」
「そっちこそじゃーん」
「じゃ、行きますか」
二人の気配が消える。
確実に仕留めるその機を狙う為に。
精密に磨がれた毒牙が牙を向く。
「がおー」
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