「ん………うぅ……」
目を開く。意識を失っていた。
体を動かそうにも激痛が走る。負けたのだ。
敗北の瞬間の記憶が甦る。
高城のラッシュを食らった。
何発受けたかはわからないがそこからの記憶はなかった。
「目が覚めましたか?」
声の主は高城。
浦野のすぐ隣にいた。
壁にもたれ掛かっているのもおそらく高城が運んだのだろう。
「どうして止めを刺さない」
浦野は動かない体で目線を床に落としたまま言った。
「止めを刺す理由がないからです!」
「ッ!?」
浦野は耳を疑った。
しかしそれはハッキリと聞こえた。
殺す理由がない?そんなもの充分あるじゃないか
メンバーを襲い、その上彼女に対しては殺そうとした
命を狙われた相手に理由がないだと…?
「確かに怖かったです、痛くて苦しくて………でもだからといって同じ仲間の命を殺める理由にはなりません!」
同じ仲間……か…
「ふっ…」
浦野は小さく笑った。
まるで見たことのないものを見るかのような眼差しで高城を見つめる。
「負けたわ、わたしの完敗よ」
そう言うと彼女から殺気が消えた。
あれだけはりつめていた緊張が嘘のようにほぐれる。
もう完全に敵意は感じられなかった。
「それじゃあ質問に答えて」
高城の後ろから小嶋の肩に手を回し補助をしながら歩く高橋が口を挟んだ。
高城の元まで寄ると小嶋を降ろし質問する。
「これは一体どういうことなのか説明して」
高橋は横たわるメンバーたちを指さす。
「これはわたしの能力よ」
「能力?」
「ええ、特殊な能力。わたしたちは“スタンド”と呼んでる」
「じゃあその“スタンド”でみんなを?」
「一時的に眠ってもらってるだけ。すぐに目を覚ますわ」
高橋の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
不思議な力があることは認めざるを得ない。
目の前で実際に起こったことなのだから。
しかしそれでもこれだけの状況を整理するにはあまりに情報が多すぎる。
「でもどうしてこんなことを?」
「ある人からの命令よ」
「ある人?」
「秋元先生よ。あの人からの命令で大切なものを集めてるの。天国へ行くために必要なものをね」
さらに驚いた。
秋元という名が出たことにもだがさらに不可思議な単語が並ぶことに。
「あきちゃ分かる?」
「わかりません!」
即答だった。
あまり期待はしていなかったが反射速度と威勢の良さだけはは褒めてやろう。
だが自分もそんな状況だった。
何一つ理解できない。
全てが架空の作り話のように感じる。
できるならば夢であってほしいと切実に願う。
しかしこれは紛れもない現実。
「じゃ、じゃあ秋元先生が裏で何かを企んでるってこと?」
「企んでるなんてもんじゃない。世界を揺れ動かす…」
「口が過ぎるぜ、シンディー」
会話を遮るように声が発せられた。
観客席の最後列、ロビーへの扉からそれは聞こえた。
「負け犬だからって寝返りはよくねーなぁ」
ほどけた緊張が再びはりつめる。
そこにいた二人によって。
「佳代……恵………」
浦野が睨み付けた視線の先には野呂と大堀が立っていた。
不気味な笑みを浮かべて。
「逃げろ…」
「えっ?」
高橋が聞き直す。
浦野は体を無理矢理動かし立ち上がろうとする。
「無理だよ、そんな体じゃ立てない!」
「いいから逃げろ!二人だけでも全力で逃げるんだ!」
浦野が必死に叫ぶ。
しかしその言葉の意味を二人はわからない。
戸惑いの表情を浮かべ困惑する。
「いさぎいいのねぇ~一美ちゃん」
「秋元先生からの命令は敗者の抹殺だ」
野呂と大堀が共に歩きだす。
「死人に口なし、ここで全員死んでもらう」
.
目を開く。意識を失っていた。
体を動かそうにも激痛が走る。負けたのだ。
敗北の瞬間の記憶が甦る。
高城のラッシュを食らった。
何発受けたかはわからないがそこからの記憶はなかった。
「目が覚めましたか?」
声の主は高城。
浦野のすぐ隣にいた。
壁にもたれ掛かっているのもおそらく高城が運んだのだろう。
「どうして止めを刺さない」
浦野は動かない体で目線を床に落としたまま言った。
「止めを刺す理由がないからです!」
「ッ!?」
浦野は耳を疑った。
しかしそれはハッキリと聞こえた。
殺す理由がない?そんなもの充分あるじゃないか
メンバーを襲い、その上彼女に対しては殺そうとした
命を狙われた相手に理由がないだと…?
「確かに怖かったです、痛くて苦しくて………でもだからといって同じ仲間の命を殺める理由にはなりません!」
同じ仲間……か…
「ふっ…」
浦野は小さく笑った。
まるで見たことのないものを見るかのような眼差しで高城を見つめる。
「負けたわ、わたしの完敗よ」
そう言うと彼女から殺気が消えた。
あれだけはりつめていた緊張が嘘のようにほぐれる。
もう完全に敵意は感じられなかった。
「それじゃあ質問に答えて」
高城の後ろから小嶋の肩に手を回し補助をしながら歩く高橋が口を挟んだ。
高城の元まで寄ると小嶋を降ろし質問する。
「これは一体どういうことなのか説明して」
高橋は横たわるメンバーたちを指さす。
「これはわたしの能力よ」
「能力?」
「ええ、特殊な能力。わたしたちは“スタンド”と呼んでる」
「じゃあその“スタンド”でみんなを?」
「一時的に眠ってもらってるだけ。すぐに目を覚ますわ」
高橋の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
不思議な力があることは認めざるを得ない。
目の前で実際に起こったことなのだから。
しかしそれでもこれだけの状況を整理するにはあまりに情報が多すぎる。
「でもどうしてこんなことを?」
「ある人からの命令よ」
「ある人?」
「秋元先生よ。あの人からの命令で大切なものを集めてるの。天国へ行くために必要なものをね」
さらに驚いた。
秋元という名が出たことにもだがさらに不可思議な単語が並ぶことに。
「あきちゃ分かる?」
「わかりません!」
即答だった。
あまり期待はしていなかったが反射速度と威勢の良さだけはは褒めてやろう。
だが自分もそんな状況だった。
何一つ理解できない。
全てが架空の作り話のように感じる。
できるならば夢であってほしいと切実に願う。
しかしこれは紛れもない現実。
「じゃ、じゃあ秋元先生が裏で何かを企んでるってこと?」
「企んでるなんてもんじゃない。世界を揺れ動かす…」
「口が過ぎるぜ、シンディー」
会話を遮るように声が発せられた。
観客席の最後列、ロビーへの扉からそれは聞こえた。
「負け犬だからって寝返りはよくねーなぁ」
ほどけた緊張が再びはりつめる。
そこにいた二人によって。
「佳代……恵………」
浦野が睨み付けた視線の先には野呂と大堀が立っていた。
不気味な笑みを浮かべて。
「逃げろ…」
「えっ?」
高橋が聞き直す。
浦野は体を無理矢理動かし立ち上がろうとする。
「無理だよ、そんな体じゃ立てない!」
「いいから逃げろ!二人だけでも全力で逃げるんだ!」
浦野が必死に叫ぶ。
しかしその言葉の意味を二人はわからない。
戸惑いの表情を浮かべ困惑する。
「いさぎいいのねぇ~一美ちゃん」
「秋元先生からの命令は敗者の抹殺だ」
野呂と大堀が共に歩きだす。
「死人に口なし、ここで全員死んでもらう」
.