「へっくしょん!…うぅ、風邪ひいたかな…」
前田が鼻を擦る。
「いよいよか…」
一人言を呟く。
勿論不安はある。
失敗、ハプニング、考え出せばきりがない。
「まずは2人に任せるしかないね」
迷いを捨て去るように強く言い放った。
秋風がひんやりと肌寒くなったこの季節。
街は赤と黄に彩られる。
風に乗って紅葉が空を舞う。
ひらひらと落ち行くそれが一人の女の肩に乗る。
「うわぁ~綺麗~」
目を輝かせ叫ぶ。
まるで子供のような姿。
否、背丈も子供と変わらないだろう。
「こんなに綺麗だったんだなぁー、紅葉って」
肩に付いた紅葉を取る。
少し眺めた後、隣で一緒に歩くもう一人の女にくっつけた。
「ちょっ、なにすんねんっ」
長い黒髪を無造作に掻き払う。
艶やかで真っ直ぐな髪の毛はくしゃくしゃになってしまっていた。
「うそうそ、なにも付けてないって」
「ほんまに?!冗談やったら許さんで!紅葉つけて街中歩くん恥ずかしいわ!」
「ハハハハハ!」
まるで無関係のように小さな女は笑う。
その笑い声が渇いた空気に響く。
黒髪の女は不意に紅葉の舞う空を見上げた。
「紅葉ってのは葉っぱの枯れた姿やねんで」
急に神妙な面持ちになったのを察しもう一人の女は黙った。
「わたしらはそれを見て綺麗やな美しいなって感じる
悲しいけどどんなもんでも終わりは必ずくる
やけどもそれが紅葉みたいな最後やったらうちはかまわへん」
彼女の瞳はどこか遠くを見つめていた。
遠くない先に起こりうる未来を見据えて。
しかしそこには悲しみだけではなかった。
希望と可能性を秘めた力強さがあった。
「せやな」
「え?なんで優子関西弁なん?!」
「ん~?有華の話聞いてたらうつった」
「んなあほなっ」
2人の口元から笑みがこぼれる。
そこでちょうどT字路に差し掛かり立ち止まる。
「次に会うときは計画が終わった後か…」
「へますんなよ!」
「あほ!それはこっちのセリフや!」
「そしたら」
「ほなまた」
お互い手を振り別々の道を進みだす。
背を向けるともう振り返ることはしなかった。
この道を歩むと決めたから、もう後戻りはできない。
「よいしょっと」
黒髪の女は背中についた紅葉を剥がす。
そこには小さく見覚えのある文字が記されてあった。
『転がる石になれ』
彼女の顔が綻ぶ。
これだけで全て伝わった。
不安も焦りもない。
自分は自分の仕事をまっとうするだけ。
秋の空は急に陽が沈むのが早くなる。
気づけばそこに夕陽はなく一番星が見えようとしていた。
漆黒に包まれようとする街並みに灯りが灯す。
それに照らされた彼女の黒い髪は怪しく光っていた。
「明日はB公演か…」
前田が鼻を擦る。
「いよいよか…」
一人言を呟く。
勿論不安はある。
失敗、ハプニング、考え出せばきりがない。
「まずは2人に任せるしかないね」
迷いを捨て去るように強く言い放った。
秋風がひんやりと肌寒くなったこの季節。
街は赤と黄に彩られる。
風に乗って紅葉が空を舞う。
ひらひらと落ち行くそれが一人の女の肩に乗る。
「うわぁ~綺麗~」
目を輝かせ叫ぶ。
まるで子供のような姿。
否、背丈も子供と変わらないだろう。
「こんなに綺麗だったんだなぁー、紅葉って」
肩に付いた紅葉を取る。
少し眺めた後、隣で一緒に歩くもう一人の女にくっつけた。
「ちょっ、なにすんねんっ」
長い黒髪を無造作に掻き払う。
艶やかで真っ直ぐな髪の毛はくしゃくしゃになってしまっていた。
「うそうそ、なにも付けてないって」
「ほんまに?!冗談やったら許さんで!紅葉つけて街中歩くん恥ずかしいわ!」
「ハハハハハ!」
まるで無関係のように小さな女は笑う。
その笑い声が渇いた空気に響く。
黒髪の女は不意に紅葉の舞う空を見上げた。
「紅葉ってのは葉っぱの枯れた姿やねんで」
急に神妙な面持ちになったのを察しもう一人の女は黙った。
「わたしらはそれを見て綺麗やな美しいなって感じる
悲しいけどどんなもんでも終わりは必ずくる
やけどもそれが紅葉みたいな最後やったらうちはかまわへん」
彼女の瞳はどこか遠くを見つめていた。
遠くない先に起こりうる未来を見据えて。
しかしそこには悲しみだけではなかった。
希望と可能性を秘めた力強さがあった。
「せやな」
「え?なんで優子関西弁なん?!」
「ん~?有華の話聞いてたらうつった」
「んなあほなっ」
2人の口元から笑みがこぼれる。
そこでちょうどT字路に差し掛かり立ち止まる。
「次に会うときは計画が終わった後か…」
「へますんなよ!」
「あほ!それはこっちのセリフや!」
「そしたら」
「ほなまた」
お互い手を振り別々の道を進みだす。
背を向けるともう振り返ることはしなかった。
この道を歩むと決めたから、もう後戻りはできない。
「よいしょっと」
黒髪の女は背中についた紅葉を剥がす。
そこには小さく見覚えのある文字が記されてあった。
『転がる石になれ』
彼女の顔が綻ぶ。
これだけで全て伝わった。
不安も焦りもない。
自分は自分の仕事をまっとうするだけ。
秋の空は急に陽が沈むのが早くなる。
気づけばそこに夕陽はなく一番星が見えようとしていた。
漆黒に包まれようとする街並みに灯りが灯す。
それに照らされた彼女の黒い髪は怪しく光っていた。
「明日はB公演か…」