国民民主党が提出した「若者減税法案」が、党内外で物議を醸している。対象を30歳未満に限定した所得税軽減案に対し、世代間の分断を招くとの批判が相次ぎ、党は火消しに追われている。
■ 30歳未満を対象にした「若者減税法案」とは
4月初旬、国民民主党が提出したこの法案は、30歳未満の若者の所得税負担を軽くし、基礎控除額の引き上げで可処分所得を増やすことを目的としている。背景には、若年層の消費を促進し、少子化対策にもつなげたいという意図がある。
玉木雄一郎代表は法案提出後、「若い世代の生活や仕事を支援し、人生のスタート期にかかる負担を減税でサポートする」と法案の趣旨を説明。しかし「なぜ30歳未満に限定したのか」という点については、「博士号取得者の年齢に合わせた」としつつも、党内からは「具体的な根拠に乏しい」との声も出ている。
■ 批判の声と党の釈明
法案が提出されるや否や、SNSでは「就職氷河期世代を切り捨てるのか」といった批判が広がった。非正規雇用や低賃金に苦しむ中年層からの反発も強く、「世代間の分断を助長する」といった懸念が噴出している。
国民民主党はこれまで「全世代の手取りアップ」を掲げてきたが、今回の法案はその方針に逆行するとの指摘も。玉木代表は法案提出の翌日に「対象外となる世代に誤ったメッセージを与えないよう、氷河期世代への取り組みも継続する」と釈明した。
その後、党は氷河期世代向けのYouTubeチャンネルを開設するなど対応に追われたが、党内からは「最初から言うべきではなかったのでは」との疑問も漏れている。
■ 公平性への疑問と政策の一貫性
この法案に対しては、税制度の公平性という観点からも疑問の声がある。玉木代表は「30歳未満という線引きはシンプルで恣意性がない」としつつも、他世代とのバランスや制度の一貫性に関する具体的な説明はなかった。
■ 参院選へ向けて“減税合戦”の様相
参院選まで約3ヶ月。与野党ともに物価高対策として「減税」を争点に掲げている。自民党内でも「食料品への消費税減税」の声が強まっており、公明党も減税を打ち出しているが、財源問題を懸念する声も根強い。
一方、野党各党も消費税減税を提案しており、スタンスは以下の通り:
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立憲民主党:食料品の消費税を1年間0%、最大2年延長可
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日本維新の会:食料品の消費税を2年間0%に
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国民民主党:消費税を一時的に5%へ引き下げ
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れいわ新選組:消費税の廃止
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共産党:消費税の一律5%化を主張
これらの主張が出揃う中で、「物価高対策」という大枠の争点はあるものの、各党の違いが見えにくくなっているとの指摘もある。
■ 野党共闘の行方と選挙区調整の難航
また、選挙戦略面では32の一人区での野党候補の一本化が焦点となるが、立憲民主党と国民民主党の連携は進んでいない。両党は企業献金などの政策で歩み寄れず、支持団体「連合」が間を取り持っているものの、国民民主党は選挙区調整に消極的だ。
背景には、衆院選での躍進を機に保守層の支持を広げた国民民主党が、立憲民主党との連携でその支持を失うリスクを懸念していることがある。
参院選が近づく中、減税政策を軸にどのような争点が浮上するのか、今後の動向から目が離せない。